2024年1月1日月曜日

経済人 今年の予測

 

予測は正しいでしょうか?

経営者20人が占う景気 インフレは2%、成長継続へ

主要企業の経営者20人に2024年度の景気を聞いたところ、実質経済成長率は平均1.0%だった。消費回復などで上向きの動きが続くとの見方が大勢で、予想するインフレ率は平均2.3%となった。

経営者は24年度の成長率について、23年度より鈍化すると見込む。ただ、ゼロ%台半ばとされる潜在成長率を超すプラスが続くと予想する。

日本生命保険の清水博社長は「輸出が景気のけん引役となることは期待できない一方、個人消費は物価高の逆風を受けながらも回復する」とみている。三井不動産の植田俊社長も「インバウンド需要を含む個人消費や設備投資など、内需の更なる高まりが期待される」と予測する。

国内経済のリスクについて日本製鉄の橋本英二社長は人手不足を挙げる。「(物流の)『2024年問題』をはじめ、経済停滞を招くリスクがある」と懸念する。日本郵船の曽我貴也社長は「円安の進行や資源・原材料価格の高騰」を警戒する。

24年の海外経済は米国が平均1.5%、中国が同4.4%の成長になるとの予測になった。いずれも23年に比べて鈍化する。

米国は利上げ局面が終わりつつある。第一生命ホールディングスの菊田徹也社長は米経済について「不透明感は依然強い。景気が想定以上に底堅く推移する場合、金融引き締めの長期化、それに伴う円安進行などにつながるリスクがある」と指摘する。

中国への懸念も根強い。住友化学の岩田圭一社長は「輸出の低迷、対中直接投資の減少などの動きが気がかりだ。回復に時間がかかる可能性もあると考えている」という。

日立製作所の小島啓二社長も「債務問題、不動産悪化、人口減、デフレリスクなど、バブル崩壊後の『日本化』に似た状況になることを懸念する」と指摘する。

地政学的なリスクを指摘する声も相次いだ。三井住友トラスト・ホールディングスの高倉透社長は「24年は米国、ロシア、台湾など世界で70以上の国・地域で重要な選挙が予定されている」と指摘し、政治的な混乱に備えが必要だと強調する。

為替レートの予想は対ドルで緩やかな円高方向に向かうとの見立てが多かった。平均は6月末に1ドル=140円、12月末は同137円だった。

三菱重工業の泉沢清次社長は「金利差の縮小を背景に緩やかな円高に進む」とみている。一方で「貿易収支、サービス収支の赤字が継続する。海外の投資収益は海外での再投資に回される傾向が強い」として、実需面では円安に向かう力が続くとみる。

政府・日銀に取り組んでほしい政策を聞いたところ、最も多かったのが「成長戦略の加速」で、17人が選んだ。次いで15人が「少子化対策」と回答し14人は「新エネルギーの利用促進」と答えた。

三菱UFJフィナンシャル・グループの亀澤宏規社長は「物価と賃金の好循環の実現に向けた企業の賃上げ支援」を必要な政策に挙げた。

サントリーホールディングスの新浪剛史社長は「企業の新陳代謝を進めること」の必要性を主張した。「人手不足を通じ、人への投資ができない企業の退出が行われていくが、政府がその退出を保護することはやめるべきだ」と訴えた。

24年の企業経営のテーマについてJTBの山北栄二郎社長は「人財育成・テクノロジー(デジタルトランスフォーメーション)・サステナビリティー」の3つが重要だとの見方を示す。

三菱商事の中西勝也社長は「24年は日本の長所・魅力が改めて見直される好機だ。日本企業はデジタルトランスフォーメーション、グリーントランスフォーメーションなどを通じて生産性向上・業績改善の道筋を示すことが重要だ」との認識を示している。

賃上げ、「23年超す」との見方

1990年代から日本は物価が低迷するデフレが続いてきた。世界的なインフレの影響でこの構造も変化しつつある。経営者が予測する2024年度の消費者物価指数(CPI、生鮮食品除く総合)は前年度比1.5〜3.0%となった。24年の賃上げ率については、20人のうち13人の経営者が23年を超すとの見方を示した。

キリンホールディングスの磯崎功典社長は「人件費や物流コストが増加する影響で物価上昇圧力が続く」と言及する。三井住友フィナンシャルグループの中島達社長も「原材料高や円安を背景としたインフレ圧力は低下するが、賃金上昇を価格に反映させる動きが強まる」と見通す。
政府はデフレからの完全脱却を目指している。日本にインフレが根付く可能性を経営者に聞いたところ、平均で65%となった。NTTの島田明社長は「昨今の好調な企業収益で物価高を上回る賃上げが期待され、賃金と物価の好循環の定着に向かう」とみる。

JR東日本の深沢祐二社長も「企業が生産コスト増に伴う適正な価格転嫁と継続的な賃上げを行う姿勢を示している」と指摘する。セブン&アイ・ホールディングスの井阪隆一社長は「生活防衛意識が高止まりしている」と懸念する。

30%と答えたみずほフィナンシャルグループの木原正裕社長はインフレ定着の条件を「3%程度の賃金上昇(ベースアップ)が必要と考えられる。今後1〜2年でそこまで加速する可能性は高くない」とみている。

内需の支えとなる24年の賃上げ率については13人が「23年を超す」と回答、4人が「23年並み」、1人が「23年を下回る」、2人が無回答だった。

23年を超すと予想する野村ホールディングスの奥田健太郎グループ最高経営責任者(CEO)は「23年に賃上げを躊躇(ちゅうちょ)した企業も、24年には賃上げに向かう可能性がある」と強調する。

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