2024年1月17日水曜日

日銀の本音は、日経の十字路でも書かれている。

 日銀は、本気で円安を止める気はない。ただ、日銀や政府としては、円安を止める振りをしないと、批判が大きすぎる。
長く続いた円高で、既に、輸出体制を崩壊した中小企業や、年金生活者には苦しい円安だが、債務超過大の日銀や政府には、円安での円価値低下は、実にありがたいのだ。が、円安はもっと本質的な所で、国力を崩壊させるだろうと思える。

金利上昇の損と得


賃金上昇と緩やかな物価上昇が持続するメカニズムが実現しつつあると判断すれば、日銀は政策を転換するだろう。金利が上昇すると金融資産を持つ主体の利息収入が増え、負債を持つ主体の利払い負担が増える。

大和総研の試算によると、短期金利と長期金利がそれぞれ1%上昇する場合、企業と政府は純利払い負担がそれぞれ3兆円、1.3兆円増える。対して家計は1兆円、保険・年金基金や投資信託などを含む金融機関は8兆円の純利息収入の増加となる。

ただし家計への恩恵は世帯主年齢50歳代以上に偏り、住宅ローンを抱える30~40歳代は純利払い負担が増える。実質賃金の上昇継続が前提だから問題視しすぎてはならないが、変動金利型ローンの影響には注意が必要だ。また金融機関のうち、債券保有を増やし満期を長期化させて超低金利環境下での収益を確保してきた銀行は、債券価格の下落で損失を被る。それを利息収入でカバーできないと自己資本を毀損する恐れがある。

上述した損得の差額である4.7兆円は、日銀の純利払い負担の増加を示す。金融政策が出口に向かえば膨れ上がった準備預金への付利が拡大する。最近の米国のように中央銀行が逆ざやに陥ると国庫への納付金が減るため、政府の負担は自身の利払いだけにとどまらない。政府と日銀を一体と考えれば国債の利払い負担は無視できるなどという構図は根本から変わる。

ただ財政・金融の規律と信認が保持されれば、金利上昇を受け入れられる状況の先行きは明るい。賃金と物価を柔軟に設定できるようになると労働や資本の再配分が活発になり生産性が上向く。円高リスクが唱えられるが、デフレからの完全な脱却は、第一義的には円安要因だ。最近の株式相場は日本が一変することを示しているのではないか。

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