2024年1月12日金曜日

円安要因、日経新聞の遅い報道

 マネーが戻らなくなっているのは当然のことで、日経は報道が遅すぎる。それに、円安要因はそれだけではなくて、ドル円の実需量と投機量の大きさが影響する筈で、それへの言及が全くされていない。実際に円高に喜ぶ人や苦しむ人、それに、為替に投資する人には不十分な記事だ。全くの評論家ですね。
いずれにしても、有事の円買いは、もうなさそうです。むしろ、有事の円安ですか・・

円安招く「戻らぬマネー」 5年で3兆円流出超

企業、生産拠点を海外へ 稼いだ外貨は現地で投資

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外国為替市場でドル円相場が円安に傾いている。米国の利下げや日銀の政策修正が予想されるなかでの意外な円安圧力の強さの背景に「戻らぬマネー」の拡大がある。企業の生産拠点などの海外移転が進み、稼いだ外貨が円に転換されにくい。直近5年では経常黒字でも約3兆円の資金流出超だったとの試算もある。

11日の外国為替市場で円相場は1ドル=145円台後半と約1カ月ぶりの円安・ドル高水準で推移した。1日に能登半島地震が発生した直後には「有事の円買い」も指摘されたが、円安基調が続いている。

有事の円買いの根拠は国内勢が外貨建て資産を円に戻す「リパトリエーション」だ。損害保険会社が外貨建て資産の一部を円転して保険金の支払いに充てるとの思惑が浮上する。ただ、2011年の東日本大震災でも損害保険会社が外貨資産を売っていないことが明らかになり、リパトリ観測での円買いは今回は乏しい。

かつてとの、より重要な構造変化は日本企業による外貨の円転需要の減少がある。みかけの経常黒字ほど海外の稼ぎが国内に還流していない。

海外とのモノやサービスの取引を示す経常収支は23年は10月までの速報値で約17兆円の黒字だった。海外との取引で日本が稼げている状況だ。

ところが、企業が海外での稼ぎを現地で再投資に回したり、証券投資の配当を再び海外証券に投じたりといった行動を加味すると実際には円に転換されていない部分が大きい。

みずほ銀行の唐鎌大輔チーフマーケット・エコノミストは国際収支統計をもとに、直接投資収益の約半分を占め、現地子会社の内部留保を示す「再投資収益」、証券投資収益の多くを占める「配当金」「債券利子」などは円に還流せず、再び海外で再投資にまわると仮定して、実際の資金の出入りを試算した。

19年~23年10月の約5年間の統計上の経常収支の累積額は85兆円の黒字だったのに対し、外貨と日本円の取引ベースでは3兆円の赤字だった。海外で稼いだ外貨が実際には日本円に還流していないことを示す。

07~11年では83兆円の経常黒字のうち、26兆円が外貨から円に戻っていた。日本円をめぐる構造変化が生じているという。

日本企業は過去の円高局面で生産拠点や販売網を海外に構築。海外企業の買収や設備投資を示す直接投資が拡大した。直接投資は証券投資のように簡単に撤退することが出来ず、経済環境が変化しても企業がすぐに動けるわけではない。みずほ銀の唐鎌氏は「国内での投資機会も乏しく、日本企業は海外で稼いだ外貨を日本円に戻さなくなっている」と指摘する。

日本たばこ産業(JT)は昨年12月、オランダの連結子会社であるJTインターナショナル・ホールディングからの配当金8億ドルを同社に返還すると発表した。海外での資金需要が大きいためだ。

JTはこのオランダ子会社で約130カ国・地域の事業の資金を管理している。その一部を本社に配当として回し円転しているが、今回は海外での需要のために一旦、円転した資金を再びドルに戻した。

ガラス大手のAGCは米国や欧州の売上高が全体の4割近くを占め、欧米で稼いだ現金の多くを現地での再投資や運転資金に充てている。米国では資金管理会社に資金を集め一括管理している。

国内からの輸出でも、ドルで原材料や部品を海外から調達するために収入をドルで管理するケースも多い。

13日には台湾総統選を控える。今年は米大統領選などロシアや中東だけでなく地政学リスクが大きいとされ、円と同様、安全通貨とされてきたスイスフランは上昇を続けている。

11日は1フラン=171円台と円相場はフランに対し、過去最安値を更新した。金利水準の高さや医薬品や化学品、腕時計といった高付加価値製品を国内から輸出して貿易黒字を積み上げ、フラン高の支えになっている。国内の産業が「空洞化」したとも指摘される日本とは状況が異なる。

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