2021年11月25日木曜日

日本の統治力についての日経の理解は、余りに遅い。

 日本の統治が国民のことを考えていないのは、僕の現役時代から経験したことで、それは30年も前の事だし、振り返れば、戦前から変わりはない。

日本の行政、デジタル化拒む本能 使い勝手より組織優先

ニッポンの統治 危機にすくむ④

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浅川直輝さんの投稿浅川直輝

9月に発足したデジタル庁の動きが鈍い。政府内のやりとりからは電子化の推進役とはほど遠い姿勢が浮かび上がる。

「とにかく早くやってほしい」。首相官邸が行政手続きの電子化を求めても「個人情報を扱うのでいいかげんなシステムはつくれない。時間がかかる」と釈明する。政府高官が何度となく見てきた光景だ。

たとえば運転免許証の情報をマイナンバーカードのICチップに登録して2025年3月までに一体化する計画。警察庁は「現在は情報管理するシステムを各府県警察で個別に整備しており、データ標準化も不十分」と説明している。

カードの使い勝手をよくする主目的よりも、各地の警察が情報を囲い込む現状のままでいいとの思いがのぞく。当初の一体化目標は26年中とさらに遅かった。

デジタル庁の民間人材も突破口になっていない。企業出身の職員が電子化を提案すると、個人情報保護法や自治体実務の慣習を盾に「複雑な業務だから無理」と返される。「技術に詳しくても行政知識で負けるので論破しにくい」とこぼす。

根底にあるのは自らが抱える情報を公開することへの強い拒否反応だ。情報やデータのオープン化によって政府の活動を透明化する流れが世界の民主主義国で加速する中、壁をつくることで自らの責任が問われるのを避けようとする日本の行政機構。その姿は進化の流れに取り残される恐竜のようにも見える。

この構造を反映した数字がある。「1900、1300、1300、4100」。25年までに電子化をめざす手続きの年ごとの件数だ。最終年への集中を内閣府幹部は「なるべく先延ばしする思惑だ」と指摘する。

政府が行政のデジタル化を目標に掲げて20年。各省庁や自治体は自らの都合でバラバラのシステムをつくり上げた。外へ情報が流れにくい閉鎖的な仕組みで、使いやすさよりも独自システムの維持を重視した。

弊害は新型コロナウイルスワクチンの接種記録システム(VRS)でも表れた。政府がつくった接種券番号を読み取って自動入力する端末に誤読が相次いだ。

医療機関が「こんな作業はできない」とさじを投げ、一部は自治体が入力を代行した。堺市の作業現場を訪ねると、スタッフが端末の前に指を出して必死にピントを合わせていた。お粗末な端末のせいで接種状況の把握に支障が出た。

VRSは急ごしらえだった。政府は2カ月でつくれるという提案に飛びついてスタートアップと随意契約を結んだ。実施テストや利用者のヒアリングよりも、閣僚が指示した期限に間に合わせるのが先だった。

「ユーザーは誰かという話が通じない。だからどこから手をつけていいか分からない」。デジタル庁の事務方トップ、石倉洋子デジタル監は10月の記者会見で官の意識の低さをぼやいた。

首相官邸が「デジタル化」の旗を振っても、デジタル庁を含めた各省庁は体裁を整えるだけの姿勢が目立つ。情報をつなげたり保存したりするのを拒んできた後ろ向きな本能が変わらない限り、国民は非効率な行政の犠牲者のままだ。

僕の考えを既に実現化している人が居た。

 

第6波へ進化する墨田区 今こそ早期発見・早期治療

点照

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新型コロナウイルスの第6波対策は何を重視すべきか。先進自治体の一つ、東京都墨田区の方針は明確だ。ワクチンが普及し、治療薬を使える今こそ、感染者の早期発見、早期治療に力を注ぐ。それによってワクチンを受けていない子どもたちや効果が薄れる高齢者を守るというものだ。

まず検査を拡充する。ワクチンの普及で無症状や軽症が増えれば感染は見えにくくなる。墨田区は第5波でも「陽性が1人出たら全員検査」という方針で積極的疫学調査を幅広く行い、保育園で距離の遠い感染例を見つけてその先の感染を防いだ。

民間の誘致で拡大した1日1900件の検体分析能力を生かし、学校や高齢者施設、繁華街でモニタリング検査を増やす。インフルエンザの同時流行も見据え、子どもの欠席を保護者がスマホで学校に連絡する仕組みも導入、感染の予兆をつかむ材料にする。

「幅広く検査すれば見えにくい感染も見えてくる。最新の疫学情報に基づいて戦略を立てなければならない」。西塚至保健所長はこう話す。

政府は第6波対策で自宅やホテルでの療養は「陽性判明の当日か翌日に連絡し、健康観察や診療をする」とした。容体急変を防ぐため、墨田区をはじめ先進自治体の対応をようやく取り入れた形だ。

政府の腰が重かったのは早く見つけても治療薬がなかったためだが、今はある。墨田区は9月までに102人に投与し全員が軽快。外来や往診で使う体制も整えた。西塚所長は「治療薬ができ、早期診断・早期治療の体制が整っている墨田区は有利」とみる。

早期診断・早期治療で重症化を抑えられれば医療の負担は減る。病床も区内の病院の協力で国の方針を上回る水準を確保している。

保健所の拡充は形が見えてきた。受援体制を整えて応援要員を育て土日を任せられるようになった。民間とも繁華街の人流調査、自宅療養者への配送、看護師派遣で連携。感染が広がっても感染者への対応だけでなく、分業体制で情報収集や医療資源確保、住民への情報提供といった本来の機能を果たせるという。

幅広い連携は区内の病院院長、医師会役員らとウェブ会議で毎週、情報を共有しているたまものだ。「これは地域の医療資源を地域全体で運営する地域医療構想にほかならない」。西塚所長のこうした指摘を各地の医療関係者はどう受け止めるだろうか。

(編集委員 斉藤徹弥)