2021年1月28日木曜日

所得税の申告 民泊経営のメリットと金融利益の損益通算の注意点

 さて、そろそろ所得税の申告だ。2月15日から申告はできるのだが、入力は今でもできる。

年金の源泉徴収票、市の健康保険納付明細、所有株配当源泉徴収票、金融機関源泉徴収票、生命保険納付証明書、民泊損益集計表など、一応必要な書類は全て準備した。僕と女房の入院・医療費は今年初めて10万円を超える。なお、所得金額は100万円に満たないから、その5%以上、つまり5万円以上については控除される。しかし、雑所得の民泊経営は赤字(今年は収入0で経費だけが発生している)だし、金融資産も一昨年の損失で控除されてしまう。つまり、控除金額が増えても控除対象がなくなるから意味が無い。少なくとも国税に関しては意味が無いだろう。市民税では割掛け分が医療費控除で控除されるか否かだろう。

とにかく、後は、「確定申告書作成コーナー」で入力するだけだ。恐らく1時間で済むだろう。
だが、歳を取ると明日やれることは明日に延ばすとなってしまう。どうしよう。

なお、金融行為での損失は、金融利益での利益で相殺できるが、申告は、分離課税のままでしなければならない。(総合課税だと相殺できないし収入が増えることで市町村税も増える可能性があり、市民税は課税対象金額が所得税とはかなり違うのだ)



2021年1月27日水曜日

元厚生省技官 木村盛世氏は変わった人だ。それがマスコミ受けしている。

木村盛代氏が正しいのか、厚労省の遣り方が悪いのか、結局は木村氏の言うとおりになってしまった。

元厚生省技官木村盛代氏、昨年の新型コロナウイルス拡大初期に、木下容子の番組とかタケシの番組で、コロナウイルスを特別な病気とみなすべきではない、との観点から、
「クラスター調査は無駄だ。インフルエンザの時に同じような失敗をしている」とか
「PCR検査を増やすことも無駄だ。またPCR検査を増やし陽性者を把握すると医療崩壊を起こす」と主張し、
「基本は、放置して免疫者が多数になるのを待つより方法はない」とか
「経済を止めてはならないとの観点でも特別な対策は不要だ」
と主張していて、他のコメンテーターのその主張への反論には鼻であざ笑うかのような反論を続けていた。
これを見たのか、コメンテーターの木村太郎氏が、その後の大下容子の番組で「老人を見殺しにする気か」と極めて憤っていた。

最近の木村盛世氏の主張、特にコロナ患者を放置しておくとの主張は変わらないが、「老人への配慮が必要だ」とかに主張を変えてきた。老人の見殺しはさすがにまずいと気づいたようだ。また、重症者については治療すると発言している。ただ、インフルエンザの死亡率と対比して問題は無いとの見解は今も変わっていないようだ。
しかし、僕としてはやはり、この人は広い視野でみることの出来ない人だと思う。
彼女の他人事でないコメントを期待するのは、結局は、中傷レベルの新型コロナウイルスに罹れば良いと思う。かような意見を自分達のコメンテーターに選ぶマスコミ達もまた信用できる連中とは言えないだろう。

ところで、彼女の主張の内、参考になるコメントは、「インフルエンザと同様レベル」との主張で、その点で特に防疫対策としての個人的な防疫対策は、インフルエンザ対策と同程度であれば、伝染をかなり防げそうだとの感じが、最近の患者数の変化から見て取れる。夜寝る時には首にタオルを巻き、風邪に罹ることさえ防いでいる。
ただ、それが、英国型、南ア型とかブラジル型の変異ウイルスにも適用できるかは不明である。

新型コロナ“特別視”は無用! 「PCR陽性者数カウントをやめ、指定感染症を外すべきだ」元厚生労働省医系技官・木村盛世氏が提言 (1/2ページ)

 大阪府で新型コロナウイルス感染による重症者数が緊急事態宣言発令時を上回るなど、感染者数の増加に伴い死者や重症者も増えている。元厚生労働省医系技官の木村盛世(もりよ)氏(感染症疫学)は、「指定感染症を外すべきだ」と提言、新型コロナを特別視せず、PCR検査での陽性者数を数えるのもやめるべきだと語る。

 大阪府では17日、新型コロナ感染で70~90代の男女5人が死亡、死者は111人となった。重症者は5人判明し、府内で療養中の重症者は70人と、第1波のピークだった65人(4月19~21日)を15日から超えている。

 全国で確認された死者は15人。5月25日に緊急事態宣言が全面解除されてから最多となった。

 これについて木村氏は、「感染者数の絶対数が増えれば、死者数や重症者数が増えるのは当然だが、ピークが前に来ようが、後に来ようがトータルの死者数は一緒だ。有効なワクチンが存在しない中では感染者が増えることを許容しない限りは収まらない」と語る。

 現在、新型コロナは感染症法で「指定感染症」となっており、入院の医療費は公費負担で、患者は全数報告の対象だ。

 「指定感染症から外し、『大化け物』のイメージを払拭すべきだ」と木村氏。新型コロナを特別視することによる弊害は大きいという。

 「軽症の入院患者がいれば医療機関は重症者に手が回らなくなる。新型コロナに特化すれば、がんなど他の命に関わる病気の治療や臓器移植などができなくなる。陽性者が出るたびに濃厚接触者を後追いすることが『儀式化』しており、必要なデータを集める疫学調査をする余裕もない。医療従事者の精神的負担も大きく、医療崩壊を加速させるにすぎない」

 改めて今すべきことは何か。木村氏は、「PCR陽性者数のカウントをやめ、医療機関に予算をつけ、重症者対応に焦点を当てる。そのうえで大阪など重症者が多い自治体から、医療体制に余裕のある地域に自衛隊ヘリなどで搬送できる体制を整えるべきだ。そうすれば国民の安心感も生まれるだろう」と提言した。
-----------------------------------------ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー氏の最近の主張

元厚労省医系技官 コロナ対策で経済止めれば医療ではなく社会が崩壊

配信

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NEWSポストセブン

コロナ感染者増“第3波”でも…「GoTo」止めるな! 「重症者対応の努力せずに経済止める議論は本末転倒」


 新型コロナウイルスの感染「第3波」に緊張が高まっている。野党からは「Go To キャンペーン」の見直し要求も出るが、元厚労省医系技官の木村盛世氏(感染症疫学)は、「重症者対応の努力をせずに経済を止める議論は本末転倒だ」と訴える。

 東京都では15日の感染者数が255人。直近7日間の平均は約305・9人に達した。重症者は3人減の38人だった。大阪府は東京を上回る266人、北海道も209人と、気温が下がるなかで感染拡大が続いている。

 木村氏は「呼吸器疾患を引き起こすウイルスの多くは乾燥や低温を好むため、冬場に感染者や重症者は増える。それは一般的な風邪のコロナウイルスや、インフルエンザも同様だ」と指摘する。
新型コロナは感染症法で「指定感染症」となっており、患者は全数報告の対象だ。
 木村氏は、2009年に新型インフルエンザが流行した際には、短期間で指定感染症から解除され、患者の全数把握も見直されたとして、「当時も100%有効な治療薬はなかった。新型コロナも早期に指定感染症から解除しないと、医療機関の負担が増えるだけだ」という。普通の病気のように扱うべきだという主張だ。

ギリシャ世界の後と言えばアレキザンダー大王だろう

 我々の年代はアレクザンダーと習ったが、近頃はアレクサンドロスと言うらしい。シーザーがカエザルと変更されたと同様のことだろう。ただ、アレクサンドロスはギリシャ語読みで、カエザルはイタリア語読みと言うことだ。古い読み方は英語読みからきている。一体、いつ変更されたのだろう。
それはともかく、興亡の世界史の01巻アレクサンドロスの征服と神話を読みじめた。そこに「アリアノス」の「アレクサンドロス大王東征記」が、大王についての最も確実な記録と書かれている。そこで八千代市図書館で調べたが無かったのであきらめた。ただ、興亡の世界史にも書かれているが、アリアノスの伝記でさえ、大王の500年後に書かれたものであり、その他の多数の大王の歴史書も、いずれが真実かは見極め難いとのことだ。
とするなら、もっと人間的に彼の行動の真実を個人的に類推することは可能だと思う。
彼が小アジアへの進軍を決めた時点で、彼は巨額の借金を背負っていた。しかし、ピュリスを陥落させ、多額の財宝を奪い、男の大人は虐殺し、婦女子は奴隷で売ることで借金は返済できた。後は、先ずはペルシャ帝国全土、次いで、エジプトと、強奪と殺害と奴隷売却費で進軍費用を調達し、その後の租税は旧組織を維持してそこから収奪している。被圧迫民族に取っては変わることの無い搾取が続いたし、ペルシャ側とマケドニア側の市民が殺害しあうとの悲劇も加わったが、アレクサンドロスと彼の仲間の支配層に取っては幸いなことに、ペルシャ帝国は多民族国家で、イラン高原から降りて来たペルシャ族が、見事な統治体制を築いていて租税システムはそのまま機能した。この旧組織をそのまま奪えば、開拓とか建設とかはすることもなく、社会は存続して税金は勝手に入ってくる。肥大化した旧組織の上層部だけは潰して、少数組織で余裕の予算で運営できる。アレクサンドロスは何ら組織を作り上げることもなく領土拡大に専念できたのだ。アレクサンドロスの寛容な政治とは、寛容であれば旧組織をそのまま利用できたとの裏返しであった。アレクサンドロスはいよいよ専制性を発揮しだして、自分の専制性を高めるべく、いろんな儀式に途方もない金を使いだした。
かくして、アレクサンドロスは植民地方式を大規模に実行したことになる。そこでは無数の現地人が富を奪われ、殺害され、奴隷化されたことだろう。
何しろ民主国家発祥の地と称されるアテネですら、アテネが最盛期には、市民の一人一人に戦勝で得た奴隷が最低2人を所有していたから、アテネの民主主義とはいったい何だったのかと考えさせられる。そんな時代だから、アレクサンドロスの統治は当時としては当然のことで、むしろ他の侵略国の残虐さに比べれば比較的に寛容と称されたわけだ。
だが、インド侵入に際しては、彼は住民を殺しまくっている。暑さでいらいらしたのだろうか。
更に、アレクサンダーは彼の統治地域に多くのギリシャ人都市を建設してヘレニズム文化を醸成したとのことだが、事実は、彼から見て信用の出来ないギリシャ兵(マケドニヤ兵以外の兵士が殆どだが反抗的なマケドニア兵も)を僻地に隔離するするべく都市を建設したとのことらしい。彼が早く死んだことで彼の名声は高まったが、長生きしていれば、悲しい老醜をさらしたであろう。

日本人には、西洋歴史への大きな誤解があるようだ。

西洋各国の指導層(一般人は日本人と同様の意識)は、過去の歴史の残忍さは良く理解していて、過去の種々の国家での統治方式について多くを学んだ近代西洋諸国は彼の統治方式をそのまま模倣して植民地経営を行ったことになる。植民地の経営そのものは現地人に行わせたことで、現地人の恨みの多くは彼等の同胞に向かったことであろう。
それに比べて、日本の植民地経営は、余りに現地の旧組織に干渉したり、移民を大々的に行う等、多くの傷を日本国民に負わせたことになる。要するに何をやっても日本の指導層は下手くそなのだ。その傷が今でも韓国の恨みとして残っている。
韓国人もまた、明らかな大国である中国の残虐な統治は当然として受け止めて、自分達より文化的に劣る日本人からの辱めは未来永劫に忘れる気は無いようで、韓国人もまた日本人と同様の無駄な労力を無駄な事柄に消費する民族らしい。しかし考えれば、韓国人と日本人は人種的にも文化的にも精神的にも、同じ種族だからそうなるのだろう。
より合理的な西洋人は彼等の長い歴史から、有能な施政者を選ぶ方法や統治組織を有能に保つ方法、独裁者を防ぐ方法、植民地を容易に運営する方法などを、全てを歴史から学んだことになるが、アレクサンドロスからは植民地経営をいかに有効にするかを学び、アメリカ大陸での占領経営、アフリカ・アジアでの植民地経営などで、有効に応用したことになる。

なお、僕のアレキサンドロスへの批判的な記載となったが、この本を読み進めて行くと、当初には、たんたんとアレクサンドロスの経過を記述していたが、記述後半では、本著者も僕と同様に、英雄アレキサンドロスへの厳しい批判を書いていた。つまり、本文では私的な感情を交えずに記述したものの、最後には、アレクサンドロスの恣意的で残忍な行為に我慢できずに批判を吐露したと理解する。著者の批判は、アレクサンドロスのみではなく、中央アジア周辺で行われた近代の出来事にも拡大されて述べられていた。2000年以上前の出来事と同じ残虐さを人類が犯していることへの怒りが感じられる。




2021年1月26日火曜日

中国の政治体制と残虐行為は、これからの世界の望ましい社会構成の大きな障害だろう。

 エコノミストの下記記事は、単に、米国の問題では無くて、日本人にも重要な記事だと認識すべきだろう。欧州は、ギリシャ時代からの長く悲惨な経験から、世界平和にとって中国が大きな脅威であることを認識しだした。
他人事でなく、結局は日本人の将来に関する重要なissueと知るべきだろう。
日本は、対中国への欧米協力のみならず、自国の技術力強化が必要だ。自由な社会体制のみならず、世界平和を口にして実行するには、いろんな意味での”力”も必要なのだ。


なお、かっては、issueなる英単語が実際的に理解できなかったが、issueとproblemの感覚的な違いが、最近判ったようだ。

ウイグル 米中の新たな火種に(The Economist)

 

トランプ前米政権で国務長官を務めたポンペオ氏は退任間際の19日、中国政府による新疆ウイグル自治区における少数民族ウイグル族らへの弾圧を国際法上の犯罪となる「ジェノサイド(民族大量虐殺)」に認定すると発表した。バイデン新大統領が次期国務長官に指名したブリンケン氏もこれに同意すると明言している。

トランプ氏は米大統領在任中、新疆ウイグル自治区でのウイグル族らの収容施設の建設に賛同する発言をしていたとされる=ロイター

米国は大統領が交代する先行きを見通しづらい時期に、中国が内陸部で行っている残虐行為にどこの国よりも最も厳しい表現を用いた。これを受けてバイデン政権と中国との間で緊張が高まり、2国間関係がさらに困難な状況に陥りそうだ。

ポンペオ氏による「ジェノサイド」という文言の使用は、正式な法的判断を示すものではない。イスラム教徒が多数を占めるウイグル族への中国の弾圧に対して、制裁を発動するためのさらなる行動をバイデン氏が義務付けられるわけではない。

トランプ前政権はすでに中国の様々な政府機関や企業、当局者に対して経済的な制裁を科しているほか、査証(ビザ)の発給を制限している。新疆ウイグル自治区トップの陳全国・共産党委員会書記も制裁の対象に含まれる。同氏は党政治局員だ。今月には、同自治区の主要産品である綿製品とトマトや関連製品の輸入を米国は禁じた。生産するにあたり、中国がウイグル族に強制労働を課した疑いがあるためだ。

しかし、ポンペオ氏のジェノサイド認定発言とブリンケン氏の同意は、米国のウイグル問題を巡る姿勢の変化を示している。同自治区では、ウイグル族を含むイスラム教徒100万人以上が「過激思想を矯正」するために強制的に施設に収容されている(過激思想とは実際には、民族の文化や教義に誇りを示すことを指す場合が多い)。そしてウイグル族の人口増加を抑制するため、女性には不妊手術や中絶手術を強要している。

「ジェノサイド(民族大量虐殺)」には広義の解釈も

国務省の法律家らは、「ジェノサイド」が適切な文言かどうかについて協議をした。ジェノサイドは辞書では通常、人々や民族の大量虐殺と定義されており、新疆ウイグル自治区で中国による大量虐殺があったという訴えはない。だが、国連総会で採択された「集団殺害罪の防止及び処罰に関する条約(ジェノサイド条約)」の定義はかなり幅広く、殺害の事実がなかったとしてもジェノサイドに当たることがある。

たとえば「出生を防止することを意図する措置」は国家的、民族的、人種的または宗教的な集団の「全部または一部を破壊する」意図をもって行われる限り、ジェノサイドに当たる。したがって、そうした意図をもって集団の一員に「深刻な精神的危害」を加えることもジェノサイドの一種ということになる。

世界各国の政府は長い間、ジェノサイド条約の定義を字義通りに解釈することには消極的だった。おそらくは、該当する事例がかなり多くなるためだろう。米国務省は従来、辞書の定義に該当する事例のみをジェノサイドとみなし、ルワンダの少数派ツチ族の大虐殺や過激派組織「イスラム国」(IS)による少数派ヤジディ教徒の虐殺をジェノサイドとしていた。

しかし、国務省当局者によると、新疆ウイグル自治区でどれほど不妊手術が強制されているかが2020年に明らかになり、国務省の一部では「ジェノサイド」と呼ぶのが適切であると判断されるようになった。

ポンペオ氏はその判断を公表する日として、退任前に丸1日執務に当たる最後の日を選んだ。つまり、その後の事態に自身で対処する必要はなく、日和見主義との印象を発言の受け手に与えた。ポンペオ氏は24年の大統領選に出馬する可能性がある。

中国は猛反発するがバイデン新政権を批判せず

中国は猛反発している。米国の「常軌を逸した」行動に対して21日、ポンペオ氏らトランプ政権の幹部など28人に制裁を科した。中国本土や香港、マカオへの入境を禁じ、中国での経済活動も制限した。

中国外務省の華春瑩報道局長は、ポンペオ氏が「笑いものや道化」になっていると断じたが、新政権への批判は避けた。中国政府内部では、バイデン氏が人権問題ではないにせよ、対中強硬路線を見直して米中関係に落ち着きを取り戻してくれるのではないかと期待しているのかもしれない。

それでも、米国がジェノサイドという言葉を使用した今、他の西側諸国も米国にならうかどうかが焦点になる。引き続き「人道に対する罪」といった言葉を使うことを選ぶ国もあるだろう。ポンペオ氏も使ったことがあり、中国側にとってはとうていやり過ごすことはできない。中国政府は現地の実態に即して議論するよりは、言い回しについて議論したほうがましだと考えているのは間違いない。

世界がどんな言葉を使うにせよ、ウイグル族に対する中国の弾圧を止めさせるのは難しい。カナダと英国は今月、中身が薄いところはあるものの、強制労働の関与が疑われる商品の輸入を禁止する措置を講じると発表した。だが、米国に追随して中国に制裁を科す国はなお出ていないし、中国の責任を問おうとした国際機関もない。

多国籍企業の多くは沈黙を守りつつ、サプライチェーンから新疆ウイグル自治区を外そうとしているものの、その点について自社の公式の立場を明確にしている企業はほんの一握りだ。欧州連合(EU)が昨年12月に中国と締結することで大筋合意した投資協定では、中国は強制労働を禁じる国際労働機関(ILO)の関連条約の批准を目指すと形ばかりの約束をするにとどまっている。

バイデン氏がウイグル族への弾圧阻止に動くのかが焦点に

バイデン氏は、中国にウイグル族への弾圧を止めるようより強く求めていく可能性があるが、トランプ氏はこの問題には関心がなかったようだ。ジョン・ボルトン元大統領補佐官(国家安全保障担当)によると、トランプ氏は19年に中国の習近平(シー・ジンピン)国家主席に対して、ウイグル族の収容施設を建設することは「正しいことなので進めるべきだ」と言ったという。

米国はトランプ政権の下で国連人権理事会から脱退したが、バイデン政権で復帰するとみられている。人権理事会ではこれまで、新疆ウイグル自治区における中国の弾圧に対して決議案が提出されたことはないが、バイデン氏が後押しすればそれも変わる可能性がある。

トランプ前政権のムニューシン財務長官は、通商問題に人権問題を持ち込むことに対して消極的だった。ポンペオ氏の下で働いていた関係者によれば、国務省は中国の当局者と政府機関など計10程度の人物と団体に制裁を科すよう提案していたが、財務省は米中関係への影響を懸念して発動しなかったという。

制裁案の対象には、新疆の治安などを主管する新疆政法委員会も入っていた。トランプ政権は強大な力を持つ同委員会に制裁を科さなかったが、バイデン政権下では財務省も意見を変える可能性がある。

北京では22年2月に冬季五輪が開催される。人権団体は大会へのボイコットを求め、米上院には開催国の変更を求める議員もいる。バイデン政権はこうした要請に対する態度を明らかにしていないが、いずれにしても、五輪参加や現地観戦を見送る選手やファンが出てくるかもしれない。

米、中国のウイグル族の弾圧を「虐殺」と認定

 (更新)

ポンペオ米国務長官はトランプ政権の対中強硬派の代表格だ=ロイター

【ワシントン=永沢毅】ポンペオ米国務長官は19日、中国による新疆ウイグル自治区における少数民族ウイグル族らへの弾圧を国際法上の犯罪となる「ジェノサイド(民族大量虐殺)」とみなすと発表した。バイデン次期政権の発足直前まで人権問題を含めた対中圧力を維持する姿勢を示した。

ポンペオ氏は声明で「中国共産党の指示と支配のもとで中国政府はウイグル族らへの罪を犯してきた」と指摘し、具体例として100万人超の市民の恣意的な投獄や不妊手術の強制、拷問、強制労働などが課されてきたと指弾した。さらに「虐殺はいまも続いていると確信している」と表明した。

そのうえで、拘束しているウイグル族の解放や収容施設の解体中止などを求めた。さらに適切な国際機関が虐殺の責任者に説明責任を追及するよう求めた。

中国の習近平(シー・ジンピン)国家主席を名指しし「米国は共産党と習主席がごまかしやプロパガンダ、威圧によって隠そうとしたものを明るみに出そうと取り組んできた」とも強調。習氏に責任の一端があるとの考えをにじませた。

集団殺害罪の防止及び処罰に関する条約(ジェノサイド条約)は1948年に国連総会で採択され、関係者は処罰すると定める。第2次世界大戦中のナチスドイツによるユダヤ人虐殺を受けてできた。約150カ国が批准している。日本は批准していない。

※掲載される投稿は投稿者個人の見解であり、日本経済新聞社の見解ではありません。

  • 滝田洋一のアバター
    滝田洋一日本経済新聞社 編集委員
    分析・考察

    ウイグル族への弾圧を問題視しているのは、米国のトランプ政権ばかりではありません。例えば英国。BBCがこの問題を取り上げた記事をいくつか拾ってみても、 「中国政府がウイグル人収容所で『洗脳』 公文書が流出」(2019年11月25日) 「中国の収容所、ウイグル族のモデルが内部を撮影」(20年8月5日) 「ツイッター、在米中国大使館の投稿を削除 ウイグルは『解放』されたと主張で」(21年1月11日) などがあります。いずれも驚くようなファクトをあげて報道しています。 バイデン政権がウイグル族の人権問題でどのような対応に出るのか。人権重視をうたうからには、対中外交の試金石となるはずです。

    米、中国排除へ中南米融資

    エクアドルに3600億円 5G機器で綱引き

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    【サンパウロ=外山尚之】米国が中南米諸国に対し、資金を提供する代わりに通信網からの中国企業の締め出しに動いている。南米の産油国エクアドルに対し、中国からの債務借り換えのための融資を実行した。もっとも、ブラジルではボルソナロ大統領が中国企業の排除を断念したと報じられており、バイデン米大統領の新政権にとっても課題となりそうだ。

    欧州、東アジア安保に関与 対中「政経分離」に限界

    欧州総局編集委員 赤川省吾

     (更新) [有料会員限定]

    ドイツ政府が「インド太平洋戦略」に極東への海軍派遣を盛り込むのは、東アジアの安全保障体制に関心が高まっているからだ。政治では距離を置き、経済ではうまくつきあうという対中政策の「政経分離」を狙うが、人権を重視する緑の党が与党入りする可能性が高まっており、「いいとこ取り」の戦略には限界が近づいている。

戦史の時代と、今も、余り変わっていないようだ。

 地中海領域が世界であった時の、地中海世界の国々と、今も、情勢は余り変わりがないようだ。中国はあたかも世界の友好的指導者であるかのように振舞うが、やはり、その強権的で強制的・独善的体質が変わらないと誰も信用しないだろう。ヨーロッパ諸国も中国の覇権意欲に恐怖を感じ始めた。日本が最も鈍感なようだ。中国のコロナウイルスに関して、自国の責任を感じていないように、日本は自国の利益を優先して、中国の、主として技術的な開花を招いた元凶であることを認識すべきだろう。責任を欧米と分担すべきだろう。

習氏「新冷戦、世界を分裂」 バイデン政権をけん制

 (更新)
25日に開幕したWEF主催のオンライン会合「ダボス・アジェンダ」で講演する中国の習近平国家主席=新華社・共同

【北京=羽田野主】中国の習近平(シー・ジンピン)国家主席は25日、世界経済フォーラム(WEF)のオンライン形式の会議で講演した。バイデン米政権を意識し「新冷戦や制裁は世界を分裂に向かわせ対立させる」とけん制した。気候変動問題で対話の糸口を探る考えも示した。

バイデン大統領が1月20日に就任して以降、習氏が対外的に演説するのは初めて。習氏は「単独主義や自己陶酔で傲慢になるいかなるやり方も必ず失敗する」と述べた。

トランプ前政権が掲げた「自国第一主義」をバイデン氏が継続しないように強くけん制した。米中対立の長期化を警戒しているとみられる。

「各国の違いを尊重し内政干渉をすべきではない」とも話した。バイデン政権が新疆ウイグル自治区に住むウイグル族の人権問題を重視しており、懸念する姿勢をみせた。

一方で「中国は対話で意見の食い違いを埋める努力をする」とも語り、米政権との対話の再開に意欲をにじませた。「協議や連携を堅持し、衝突や対抗は求めない」とも強調した。

習指導部が米国との対話の糸口になるとみているのが気候変動問題だ。バイデン氏は地球温暖化対策の国際枠組み「パリ協定」に復帰する考え。習氏は「パリ協定を実行に移してグリーン経済の発展を促す必要がある」と歩調を合わせた。

コロナ・経済で主導権狙う 習氏、米に先手 ダボス準備会合

【北京=羽田野主】世界経済フォーラム(WEF)は25日からオンライン形式の会議「ダボス・アジェンダ」を開き、中国の習近平(シー・ジンピン)国家主席が特別講演した。新型コロナウイルスの感染が止まらないなか、中国は国際連携を促し、バイデン米政権に先手を打つ。
習氏が演説でみせたのは新型コロナの抑制と中国経済の回復に向けた「自信」だ。中国は公式統計上はコロナの感染者数が米欧日より少なく、2020年は主要国で唯一プラス成長を確保した。「世界経済を長期安定した発展軌道に乗せる」と中国経済の成長が貢献できるとの考えも示した。
習氏は「中国は新発展段階に立脚している」と強調した。新発展段階は習氏が1月に地方幹部らに述べたキーワードで「豊かになることから強くなることへの歴史的飛躍を迎える新たな段階」(習氏)と位置づける。
対米外交を巡ってもけん制色が濃い内容になった。バイデン政権が進めようとしている同盟国外交を念頭に、国際社会の「インナーサークル」の形成に向けた動きや、米中のデカップリング(分断)を批判した。
バイデン氏との対話に意欲をみせながらも、内需を中心に中国経済を回していく「双循環」構想の推進を改めて強調した。広域経済圏「一帯一路」を推進する考えも示した。米中の長期対立を覚悟する姿勢を表す狙いがあったとみられる。
習氏は「ワクチンの研究開発や生産、配分を巡る連携を強化する」と述べた。中国はアフリカや東南アジアなどにワクチンを低価格で提供し、囲い込みに動いている。
バイデン政権の機先を制しコロナ対策や経済再生を訴え、国際社会で主導的な役割を担う意欲がうかがえる。習氏の母校の清華大学の戦略・安全研究センターは2020年末に「バイデン政権は発足後はコロナ対応と経済再生を優先し、対中関係に回す政治資本は限られる」とするリポートをまとめた。
習氏が前回ダボス会議で演説したのは17年1月で、トランプ米政権の発足直前だった。「保護主義に反対する」と強くけん制した。
当時の演説は海外投資家らの大きな関心を集めたが、いまは批判も受ける。中国は「開放型経済」の推進を表明しつつも、オーストラリアがコロナ発生源の調査を求めると、農産品などに輸入制限をかける制裁を突然発動した。中国の主張にそぐわない国には経済圧力をかける「二重基準」に対し、米欧で不信感がくすぶる。
17年の演説では「市場が資源配分の中で決定的な役割を果たすようにする」と指摘し中国経済の改革の必要性を強調したが、今回は触れていない。人民元安への誘導も否定していたが、今回の演説では言及しなかった。
ダボス会議は1971年から開催されている。例年スイス東部のダボスで世界の首脳や経営者が集まり議論してきたが、21年1月の年次会合はコロナ禍で延期された。
年次会合は5月にシンガポールで開く予定だが、今回は議題を詰める準備会合と位置づける。各国首脳・グローバル企業のトップら70カ国1500人超がオンラインで参加する。
習氏の25日の特別講演を皮切りに、ドイツのメルケル首相、フランスのマクロン大統領が26日に発言する。27日には韓国の文在寅(ムン・ジェイン)大統領やイスラエルのネタニヤフ首相が登壇し、菅義偉首相は最終日の29日に演説する予定だ。
米国はバイデン大統領の気候変動問題担当特使であるケリー元米国務長官が参加する予定だ。温暖化対策をきっかけに米中が関係再構築に向けて動き出すかが注目される。
WEFのクラウス・シュワブ会長は18日の記者会見で、既存の社会システムが信頼を失いかねない状態にあると語った。コロナ禍で経済格差が広がり、既存の資本主義や政治の欠陥があらわになったからだ。「この危機を乗り越えるには、世界への信頼を取り戻すことが必要だ」と述べ、コロナ後の世界を議論することが重要だとした。

次いで欧州の動きは?

欧州、東アジア安保に関与 対中「政経分離」に限界

欧州総局編集委員 赤川省吾

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ドイツ政府が「インド太平洋戦略」に極東への海軍派遣を盛り込むのは、東アジアの安全保障体制に関心が高まっているからだ。政治では距離を置き、経済ではうまくつきあうという対中政策の「政経分離」を狙うが、人権を重視する緑の党が与党入りする可能性が高まっており、「いいとこ取り」の戦略には限界が近づいている。

独、日本に艦船派遣

今夏にも、中国抑止狙う

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【ロンドン=赤川省吾】ドイツ政府は独海軍に所属するフリゲート艦を日本に派遣する検討に入った。今夏にもドイツを出航する。海外領土を持たないドイツが極東に艦船を送るのは極めて異例。英国も航空母艦を近く太平洋に展開する。対中警戒論が急速に強まる欧州におけるアジア政策の転換を象徴する出来事になる。(関連記事国際2面に

独政府は昨秋にインド太平洋ガイドライン(指針)を閣議決定した。現在は指針にもとづく具体策を詰めており、海軍の派遣はその一環となる。

複数の独政府・与党筋によると独北部を母港とするフリゲート艦1隻が長期にわたってインド太平洋地域に滞在し、日豪韓などに立ち寄る。同地域に点在するフランス領で補給を受けたり、共同演習に参加したりすることを想定。南シナ海を航行する案もある。

ジルバーホルン独国防政務次官は取材に「今夏に出航したい。まだ詳細は決まっていないが(寄港先として)日本が視野にある」と明らかにした。「自由民主主義陣営のパートナーとの絆を深めたい」とも語った。

同次官は「だれかを標的にした計画ではない」と強調したが、力による現状変更を試みる中国をけん制する意味合いがあるのは明らかだ。

ドイツは域外派兵に慎重でアジアは伝統的な関心領域ではない。にもかかわらず海軍を展開すれば強力な政治メッセージとなる。国際秩序の維持に積極的にかかわる姿勢を示す。

英国は空母クイーン・エリザベスをインド太平洋に送る。英海軍報道官は取材に「4~6月に出航する見通し」と答えた。