2023年3月2日木曜日

投資情報

キーエンスの純利益率4割 4〜12月、高単価と販売増両立

決算ランキング③売上高純利益率

東証プライム上場企業(全産業)の4〜12月期の純利益率は5.4%と前年同期(7%)から悪化した。長期化する材料高や部材不足などでコスト負担が増し、売上高が2割近く増える中で純利益が約7%減ったためだ。増収幅が2ケタと大きいにもかかわらず減益になるのは、ここ15年で初めてだ。

そんな中、好採算を維持する企業がある。事業環境悪化の影響が大きい製造業(日経500種平均株価採用企業の180社)で純利益率が2位のキーエンス。昨秋にセンサーや計測器など全商品を10〜35%値上げしても販売が好調だ。同社は生産を外部委託し商品開発や直販営業に特化。新商品の7割で世界初や業界初の機能を持ち価格競争力も強い。

電気自動車(EV)向けの空気圧機器などが好調なSMCは利益率28%で7位だ。受注から数日という短納期で顧客の要望に即応する強みから価格を維持しつつ受注を増やした。塩化ビニール樹脂で高シェアの信越化学工業が8位、半導体の保護部材が強い新光電気工業が12位、車載向けも強めるヒロセ電機が15位とそれぞれ順位を上げた。半導体製造装置各社も引き続き収益性が高い。

独自製品がけん引した医薬では、塩野義製薬が利益率(47%)、伸び率(前年同期比14ポイント)ともに首位だった。新型コロナ治療薬が好調だ。小野薬品工業は主力のがん免疫薬「オプジーボ」の販売増で10位から5位になった。電炉大手の大和工業は米持ち分法適用会社の好調などで利益率38%に上昇し3位だった。

非製造業をランキングすると、運賃高騰でコンテナ船事業が好調な海運大手3社が上位5社に入った。首位は川崎汽船で利益率は88%にのぼる。営業から開発、保守サポートまで自前で手掛けるオービックも初の5割に達し4位だった。

純利益率は投資家が注目する自己資本利益率(ROE)を構成する要素の一つでもある。株式市場では「景気の不透明感が強まると収益力の高い企業には投資マネーが入りやすくなる」(大和証券の阿部健児チーフストラテジスト)との声があった。

(斎藤萌)
 

信越化学工業、4〜12月増益額4位 逆風下で値上げ浸透

決算ランキング②最終損益の増減額

変則決算などを除く3月期決算企業を対象に日本経済新聞が集計した。4〜12月期の純利益合計は前年同期比7%減で、うち製造業は6%減った。原材料高が長引いたほか、景気減速でスマートフォンやパソコンなどの需要が落ち込んだ。

逆風下で利益を伸ばしたのが信越化だ。4〜12月期の純利益は前年同期から2253億円(64%)増えた。住友化学など他の化学大手が価格転嫁の遅れなどで通期の最終損益見通しを下方修正したのと対照的だ。

好調の要因の一つは値上げの浸透だ。世界シェア首位の塩化ビニール樹脂で米子会社シンテックが22年4月にポンド当たり3セントの値上げを実施。23年1月には6セント、2月には4セントの値上げを打ち出した。「値段はきめ細かく対応している。総合的に見て当社の売値が他社より高いということは考えられる」(信越化の斉藤恭彦社長)

もう一つは市況変動に左右されにくい事業構造だ。半導体ウエハーは市況悪化を受けて10〜12月期の出荷が7〜9月期よりも減ったが、顧客との契約を長期化してきたことから利益影響を軽微にとどめた。半面、在庫を積み増すため高水準で生産を続けている。需要回復期に備える。

信越化以外の上位9社は商社や運輸で占めた。顔ぶれは4〜9月期と大きく変わらないものの、増益ペースは鈍くなった。利益をけん引してきたコンテナ船運賃が下落しているほか、資源高が一服しているためだ。三菱商事商船三井日本郵船川崎汽船は10〜12月期に前年同期比で減益に転じ、4〜12月期の増益額が4〜9月期よりも減った。

一方、4〜12月期の最終損益の悪化額上位には、電力や金融などが並んだ。電力は燃料価格の高騰で採算が悪化し、東京電力ホールディングス(HD)、東北電力関西電力が最終赤字に転じた。東電HDの燃料調達費は2倍超に増えた。コスト増を電気料金にすべて転嫁できずにいる。

トヨタ自動車は純利益が前年同期よりも4171億円(18%)減った。原材料やエネルギー費の高騰が響いた。円安による利益の押し上げ効果で吸収できなかった。

(河野舜)


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