2020年8月25日火曜日

安倍君は結局、何を成し遂げたのだろうか



消えた「アベノミクス」 経済最優先、目算狂う
最長の先 陰る「1強」(2)

新型コロナ
 
政治
2020/8/25 0:30 (2020/8/25 5:00更新)
1268文字
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「そんなの無理だよ」。3日、安倍晋三首相は官邸の執務室を訪れた稲田朋美幹事長代行に伝えた。
稲田氏は基礎的財政収支(プライマリーバランス)黒字化の目標年次を骨太の方針に明記しなかったのに不満を示した。
首相が2年前に決めた2025年度の黒字達成の目算は新型コロナウイルスで狂う。対策で国債の追加発行は100兆円に迫る。
「いま緊縮財政はできない。理論的な正しさと政治的な選択は違う」。首相は目標にこだわらない考えをにじませた。
12年末に発足した第2次政権は金融・財政・成長戦略のアベノミクス「3本の矢」でスタートダッシュを切った。
民主党政権での円高株安は是正され日本市場は外国人投資家の注目を集めた。0.83倍だった有効求人倍率も19年4月に1.63倍と1974年以来の高水準を記録した。
アベノミクスで支持を取り付けたうえでやりたい施策に取り組む。支持率が下がれば経済最優先で取り戻す――。第1次政権で難題を同時に進めようとして失敗した首相がたどり着いた政権運営の「法則」だった。
典型が集団的自衛権の行使を一部認めた安全保障関連法での対応だ。15年9月19日に成立すると、同24日の記者会見で希望出生率1.8など「新アベノミクス」を提示した。分配重視の経済政策で支持率回復を狙った。
首相は決断した2度の衆院解散・総選挙に消費税を絡めた。アベノミクスを唱え増税延期や使途変更を争点にした。16年夏の参院選も再延期で勝利を呼び込んだ。
この法則は支持率の安定をもたらした。日本経済新聞の世論調査では内閣支持率で危険水準とされる30%を1度も割り込んでいない。国政選挙と党総裁選で9連勝し「安倍1強」を築いた。
支持率が落ちた今年6月以降は本来、経済を押し出す時期となる。その法則に変調が見える。
「消費税を減税すべきだ」。6月の自民党役員連絡会。積極財政派で首相を支える西田昌司氏は8%への減税を唱えた。党内に「首相は再び減税を争点とした衆院解散に踏み切るのでは」との臆測が出たものの、首相が動く気配はなかった。
新型コロナの対応に追われる事情があり、アベノミクスを訴えて支持を取り戻せる確証もない。
政府は7月、景気回復が18年10月に終わり、後退局面入りしたと正式に認めた。戦後最長記録の更新は幻に終わった。西村康稔経済財政・再生相から報告を受けた首相は「うん、そうか」と短く答えただけだった。
首相は今年に入り記者会見で「アベノミクス」の単語をまず口にしない。16年参院選を前にした6月の会見は18回、14年衆院選前の11月には11回連呼した。18年後半から次第に減っていた。
今春に繰り返した「コロナ後の経済のV字回復」も今は言及しにくい。7月以降の感染の再拡大の影響で、非現実的にうつる恐れがある。
日本経済に詳しく首相とも意見交換するハーバード大学ケネディスクール上席研究員のポール・シェアード氏は言う。
「コロナの影響でまたも不況に陥り、慢性的デフレになる危険性が高い。今回こそリフレ政策にコミットすべきだ」
残り1年あまりの経済運営は混沌としている。

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