2018年7月29日日曜日

岩の一族 長老の教え 添書(3)


 その日、伊一郎は午前中を歩道のブロック張りで過ごし、昼飯の後は池傍のベンチに腰掛けて熊さんおごりの缶コーヒを飲んでいた。美しいホシハジロはいつの間にか何処かに行ってしまい、池には真鴨と、かる鴨たちが騒々しく泳いでいる。脳裏にホシハジロが淋しく泳ぐ姿が眼に浮かび、やはり小母さん達の言うように、ビニールシートが邪魔で新芽を食べられなかったからだろうかと考えては、どうしようもないことながらも、後悔を含んだ虚ろな気分になってしまった。池の中の所々に浮き上がっているシートが黒いラクダのような背中を見せていて、水面に映る筈の晴れた空の色は、底に敷き詰められたビニールシートの灰色に打ち消され池全体が黒く塗潰されて、なんとも不気味な眺めにみえる。

「おい、苦学生」との熊さんの声で顔を向けると池に背を向けて座る熊さんが顎をしゃくった。振返ると女の影が真近にある。やれやれまたクレームか、それにしても、熊さんこそが公園についての責任を持つべきだと、いつもの不服を胸の中で言いながら伊一郎は立上がった。

 小母さん達相手に苦情を巧くいなしている様子を目撃された時に、『たいしたもんや』と熊さんのお褒めの言葉をもらい、その報奨として口下手な熊さん達に代わり公園の苦情を一手に引き受けることになってしまった。誰かが熊さん達にクレームをつけると、わざわざ彼の所に送り込むとの手の込んだ遣り口である。『市役所に言ってくれ』と答えるだけのことだから、わざわざ来させないでくれと伊一郎は何度も頼んだが、『苦学生の言い方には心が籠もっとる。儂等が言うと相手も納得せんし、下手をすれば口喧嘩になってまう』と熊さんは言うことを聞かない。それに少々面白がっている気配もある。伊一郎としては別に心の籠もった応対をしているわけではなく事を荒立てないようにと努めているだけのことである。

 くそっ、心の籠もった応対をやってやる、と立上がったものの、かがんだままの長い労働で腰が痛く、「てててて」と伊一郎は悲鳴を上げてしまった。腰に手を当て上目で相手を窺うと、今日の市民はかなり若い女性である。

「あのー、林の中の巣箱のことで聞きたいんですけど」

と、澄んだはっきりとした言葉遣いである。巣箱のことなら爺さんと伊一郎の管轄で、しかもまことに後ろ暗い所がある。それに、相手が中年の小母さんのときには我関せずと馬鹿話しに興じる熊さん達も、この時ばかりは耳を澄まして聞き入っている。ここで下手なやり取りは出来ないと伊一郎は緊張して身構えた。

 鶯色のコートを着た若い女は、まだ幼なさの残った顔に、若い男に話しても通じだろうかとの迷いを見せ、熊さんと伊一郎に視線をうろつかせながら、

「えー、鳥の観察したいんですけど、・・・勝手に見ててええのですか」

「ええ、皆さんに楽しんでもらおうと、餌台や巣箱を取付けていますから、静かに近付いてくれはるんやったら、それで十分です。自由に楽しんでください。・・せやけど、今巣箱に居着いてるのは、31巣箱にシジュウカラと、あとは10、16、それに、えーと、21に、ひよどりくらいです。巣箱に番号書いてますから、すぐに判ります」と、市民への応対にもこの頃はいよいよ手慣れ、伊一郎は無難に喋ってから座ろうとしたが、「苦学生、案内したらんか」と熊さん。

「あのー、床張りが・・」と言いかけると、ぎろっと目玉を剥いた熊さんは口だけは優しげに、「仕事の方はええ。お前等の仕事の理解者が一人でも増えたら本望やろが」と言う。

『くそ、言い出したらきかんのやから。なんでこんな小娘を特別扱いせなならんね』と心中思いながらも、「はい。じゃあ、案内してきます」と伊一郎の口は勝手に口走った。『僕もいい加減な男だ』と伊一郎は心中思ったが、仕方がなく先にたって歩き始めた。少し行ったところで後を歩く娘が横に並ぶようにしながら話しかけた。「くふっ、忙しいところをご免ね」

 最初の「くふっ」は彼と熊さんのやり取りで吹き出しているのだ。あの雰囲気を機敏に感じ取るとは大したものだと感心した伊一郎は横を向き、小鳥のように気持ちのよい声の持ち主を観察した。背丈は彼よりも少し高く髪は短く切り揃えている。目鼻立ちは整っているが幼い感じがまだ残っている。大人になれば、目立った美人になることが約束された顔立ちだが、年令の読み取れない不思議な雰囲気の娘である。口調はしっかりしており、どうも伊一郎の最も苦手とする容貌と気性に思えた。

「いや、ええんや、あっちの方は手伝いしてるだけやけど・・それにしても言いだしたら絶対きかんのやから熊さんは。まあ仕事よりは案内する方が楽やから僕はええんや」

「へー、なんか複雑な事情があるようやね」

「いや、単に、人はええけど頑固なおっさんと、気の弱い若造との関係や」

と、この頃の重労働と人使いの荒い熊さんにむくれてぶっきらぼうに言うと、娘は「ぷー」と吹き出して肩を震わせて笑っている。

「それにしても小鳥の観察て、なにするのや」

「いえね、以前に散歩していたときに、あなた達が巣箱取付けてはるのを見て、鳥の名前ぐらい知っとかんと勿体ないなあと思うたんよ。それで図書館で本を借りてちょっとは予習をやったから、後は実地訓練ということやねえ」

 ふーん、この浮かれた時代に変わった娘もおるもんや。それにしても、熊さんの言うように初めてのお客さんや、これは大事にせなあかんなあ。やっぱり熊さんの判断力は優れているかもしれん、と伊一郎は考えた。

「鳥のことやけど・・・僕らは鳥箱や餌台を取り付けただけで、鳥の観察やとか生態とかは全くの素人やねん。せやから教えられることは余りないんや」

 どうも、鳶服を着ていると若く美しい娘への緊張は全く無くなるらしい。彼は自身不思議に思うほどに、ぺらぺらと喋っている。

「そう・・まあ、その方はゆっくり調べるからまかしといて。私はこう見えても自主的行動には自信があるねん。迷惑かけることはないから」

 確かにそうであろう。娘は伊一郎の早足にも負けることのない足運びで、遅れることなく颯爽と歩いている。見掛けとは違いこれはまた勇壮たる歩きぶりをした娘の登場である。

 あちこちの鳥箱を案内してから爺さんの所に行くと、爺さんは相変わらず木を見上げて巣箱の取付け角度を瞑想中であった。何度も声を掛けて現実世界に戻してから、土井砂恵子を紹介して彼女の目的とするところを話した。周囲の人間の誰一人としてまとも名前で呼ぶことのない熊さんであれば、どうせ適当な呼び名を誂えるだろうと娘に名前を聞く気もなかったが、娘のほうから伊一郎に名乗ったのである。

 爺さんは何ら表情を変えることもなく、

「うーん、それはなかなか良い心掛けだ。巣箱に鳥が居着くのは概ね春になってからだから、これからまだまだ時間はある。その間に本を読んだり、木津君・・ええーっと、君の名前は何だったけ、そうそう伊一郎君やな・・木津君に教えてもらえばいい。頑張り給え」と言ってから、すぐに眼を木の上に向けてしまった。

 茫然としている砂恵子の肩を伊一郎はつついて、

「一応、熊さんにも紹介しとくわ。頼りになるおっさんやから」

と林を出て歩道に戻った。

「くふっふっふ。赤木先生って面白いね」

「まあ、先生かどうか知らんけど、味わい深い人ではあるわな。あの巣箱の取付け場所の選定だけで小一時間は掛かっとる。僕やったら五分てとこやけど、何がどうなっとるか訳がわからんわ」

「あっははは、何を考えているのか聞いてみたら」

「そりゃ、聞いたわ。そしたら、実験計画法にもとずいて、最も失敗の少なく、且つ効率的な方法でやってるのだ、と言ってた。失敗の方は判らんでもないけど、効率的かどうかは、どうにも理解できんわ」と、漸くまともに聞いてくれる相手を得たものだから、伊一郎はあれこれと愚痴が多くなったようだ。砂恵子はまたまた多いに笑ってから、

「どういう前歴の人かしら」

「うん。多分理工関係の仕事をやっていたと思われるけど、それ以上は判らん。とにかく僕らのルールでは、本人が喋らん限り人のことは詮索せんことにしているから」と、砂恵子の小鳥観察がいつまで続くかかは判らないが、伊一郎は一応のルールを説明した。

「後ろ暗い人も居るということやろか」と、さすがの娘も不安気なようすを示した。熊さんの疵後だらけの顔を始めて見れば当然浮かんでくる不安ではある。だが、後ろ暗いのは爺さんと彼だけと思えるが、爺さんにはその自覚も無いなあと伊一郎は考えた。

「さあ・・そうは思えんけど、どうも公園の外では喜びを見付けられん人が集まっているから、公園の外での経歴にも関心がないというのが本当かもしれん」と、伊一郎は答えた。

「木津さんもそうなん」

「うむむむ・・」と思いがけない質問に彼は返事を渋った。いや、薄々は感じていた真実を指摘されて面食らったのかもしれない。

「なんか、驚いているようやけど、どうしたん」

「うん。その点はよく考えてみるわ」

「あっはははは、その言い方は。やっぱり木津さんも、先生と似たとこがあるみたいや」「うーむ。・・・やっぱりそうかな。僕もそうやないかと恐れていたんや」

「あっはははは、冗談言うたのに、何を悲しそうな顔してはるの。それに、先生に似てると言われたら喜ぶべきことやと思うけどなあ」とよく笑う娘である。何の悩みもなく、生きていることを多いに楽しんでいることが笑い声に表れている。

「そうかなあ。なんか浮き世離れしてると思えへんか」

「確かにそうも言えるけど、そこがええとこちゃう。それに、木津さんは馬鹿にしているようやけど、大人というのは案外ちゃんと考えて行動してる、と思うたほうがええよ」

となかなか筋道のあることを言う。要するにいろんな方向から同時に物事を見ることが出来る性格らしい。今この公園ではこんな性格の人間が必要かもしれんなあと、伊一郎は再びあれこれと考え込んでしまった。

「それにしても、この公園の人は皆んな、特に木津さんはそうやけど年の判然とせん人ばかりやなあ」と、物思いに耽る伊一郎の横を歩きながら、彼が砂恵子に感じたの同じことを呟いている。元の所に戻ると、熊さん達は床張り作業を再開していた。娘の名前と、先生にも紹介したことを説明すると、

「よっしゃ、それで十分や。娘さん、そしたら好きな時に来て鳥の観察したらええわ。必要なときには苦学生を貸し出すからなあ」と言う。砂恵子は伊一郎の不服そうな顔を見ながら「くふふふ」と笑い、「じゃあ。お世話さま」と言い、体を返して林へと向かった。その後姿を見詰めながら、この公園の雰囲気が多いに変わるとの予感を伊一郎は感じた。

 それから、砂恵子は日曜毎に公園に出勤するようになったが、待遇の点では伊一郎とは大違いである。彼女は一日中林の中をうろうろと散策しては小鳥の観察をしている。おかげで彼女の野鳥観察の成果は著しく伊一郎も気付かなかった新しい鳥達を次々と発見し、その都度熊さん達の所に来て報告するのだ。熊さん達は大喜びで彼女の観察の経過を聞いては楽しんでいる。伊一郎はといえば、相変わらず熊さんと先生に使われてヒーコラと働いているが、砂恵子が来ていなくとも待遇には変わりはないと諦めは十分につくし、しかも砂恵子が居るだけで、なんとなく日曜の楽しみが倍増したような気分もある。

 その思いは伊一郎だけではない。熊さんは、「掃き溜めに鶴。おっとちがうがな公園に鶴やなあ」と馬鹿馬鹿しいことを言っては喜んでいるし、「なんで、あんな娘がこんなとこに来るのやろか、ひょっとすると失恋でもしたのやないか、可哀そうになあ。出来るだけ明るい雰囲気にせなあかんなあ」と傷跡だらけの顔を歪ませて真面目に考えている。

 砂恵子もまたよく気が利き、しかも要領の良い娘である。皆が休憩しようかと思っている頃に林の中から現われて、「なんか買ってきましょか」と声を掛ける。勿論金は熊さんが出すのだが、さっさと買物に行き、自分もご相伴にあずかりながら皆の馬鹿話に付き合っている。「いつもご馳走になって悪いなあ」と言っては、たまには紅茶入りのポットを持参して振舞う。伊一郎を除いては全員が完全に砂恵子のファンになってしまった。単純そのものだと彼は考えている。

「おい、苦学生。嫁さんに貰うんやったら、あんな娘がええで」

と、熊さんは何度も言い伊一郎は黙って笑っているだけなのだが、あまりにしばしばの言葉に到頭うるさくなって、

「そうやろか、うちのおふくろに言わすと、男に好かれる女はあんまり性格が良くないとか。ほんまかもしれんしなあ」と答えた。

「まあ、お前のお母はんが言うのも理屈やけど、あの娘は例外やで」と真剣な顔で砂恵子の肩を持っている。

「いやー、女というのは判らんもんですからねえ。それに日曜毎に暇持て余すのは、家の仕事が嫌いやとか、家族と巧くいってないからと違いますか」と伊一郎はいよいよからかったが、その話をしてすぐに、熊さんは砂恵子にこっそりと『料理は好きか』とか、『お母はんは優しいか』とか、聞いたらしい。尋ねられた砂恵子が今度はこっそりと伊一郎に聞きにきた。「熊さん、なんか可笑しいなあ、料理や掃除の好き嫌いを気にしたり、お母ちゃんが優しかとか、変なこと気にしてはるねん。なんかあったん」

 伊一郎は多いに笑ってしまった。

「何で笑うの」

「さあ、君の婿さんでも世話しよと思てるんやないか」

「阿呆かいな、私の年は何才やと思てるんやろうか」と砂恵子は苦笑した。

「あっははは、冗談冗談、ほんまは毎日曜に鳥の観察にくる君のことを心配してるんや。ところで君は何才や」と、どさくさ紛れに質問しても砂恵子はその手には乗らない。

「公園では人のこと詮索せんのがルールやろ」と形の良い鼻をつんっとそらした。

 三月に入ると公園の朝は足を早める。寒い日々と暖かい日々が繰り返し訪れ、辛夷の木は枯れた枝の先端に柔らかな蕾をつけている。鴨たちの動きは激しくなり、パン屑に興味を示さなくなり、池の底の新芽を食べようとおもちゃのアヒルのような尻を空中に露呈しながら上半身を池の中に沈めている。眼に映るすべてのものが春の気配を感じ取り準備を進めているのだ。

 池の傍でどこかの小母さんと激しく話している砂恵子を見掛け伊一郎は近寄って行った。以前に池のシートのことで彼にクレームを付けた小母さんと話しているらしい。おかしいな、あの小母さんは聞き分けのよい小母さんだったがと傍まで行くと、やはりあの小母さんであった。しかも彼女たちは大声で話してはいるが喧嘩をしているのではなくて、何事かを真剣に議論しているらしい。伊一郎が安心して通り過ぎようとすると、

「木津くん、今も増田の小母さんと話してたけど、私達は決めたからね」と砂恵子が声を掛け増田の小母さんとやらも大きく頷いている。何を決めたか見当もつかず伊一郎は、

「はあー」と答えた。

「そんなに、のんびりしている場合やあれへんでしょ」と思いがけない叱責である。何が何か判らぬようすを伊一郎がしていると、それが却って砂恵子の感情を刺激したらしい。砂恵子の顔が紅潮した。つられて小母さんも興奮し始め、

「そうよ、そうよ」と言った。

 いよいよ話の判らぬ伊一郎は茫然としてしまった。

「あのビニールシート、なんとかしようと思えへんの。鳥の楽園ゆうて、鴨が満足に生活できんなんておかしいよ、やっぱり」と、砂恵子の言葉で漸く話が判った。砂恵子もまた伊一郎が美陵市に雇われていると考えているのだ。

「まあ、そう興奮せんと・・」

「そんな呑気に言うてるときやない。鴨さん達はもうすぐ北に旅立つんや。なんとかしたらんと・・、それで市役所に抗議に行くことに決めたんや。明日行くから、木津くんも行こうよ」と、伊一郎には“君”付けで鴨には“さん”付けである。

「そんな、明日は学校や・・春休みにでも」と、一応は時間を延ばす作戦に出たが、

「鴨さんには、春休みはないの。嫌やったら嫌でええんよ。私らだけで行くから」

と強硬である。

 話が大きくなり不法仕事がばれるのは困ると、伊一郎は先ずは時間稼ぎに専念することにして、熊さんに相談する方がよいと、砂恵子と小母さんを連れていった。

「そうか、よう決心した。儂もあれはおかしいと思っとたんや。しかし儂は市役所の下で働く身やから強くは言えん。しかし、あんたら一般市民が抗議することには何の支障もない。どこに抗議したらええか儂が調べといたる」と、話を聞いた熊さんは予想とは違い、火に油を注ぐような口調で扇動した。伊一郎はこの件を大事にしない方法を考えたが何の方法は見つからず、どう考えても流れに任せる以外に方法は無いなあと諦めた。

「ただなあ、環境保護ちゅうたら先生の仕事やが、先生はそこまで気がまわらんみたいや、ここは先生の了解も得とかんとなあ。苦学生、お前先生の所へ行って話をしてこい」

 本人の知らぬ間の嘘で、爺さんは環境保全のエキスパートにさせられている。何の意見もないとは思うけれども、一応は聞きに行かねば辻褄が合わない。伊一郎はとぼとぼと歩いていった。なんとも情けなく騒々しいことになってしまったと心が重い。

 爺さんに状況報告したものの、「そうか、それは実に結構なことだ」との呟き声を得るのが精一杯で、相談する相手が居ないことに伊一郎は大きく溜息をついた。しかし、嘘にまみれたこの事は誰にも相談出来ないのだ。

「先生の言うには、『池のことは先生の管轄じゃないので、好きなように遣ってくれ』とのことでした」と報告して、またまた嘘の上塗りで伊一郎の心の中は真っ暗である。

 彼の苦悩とは関係なしに事態は十分に進展していた。爺さんのところに行っている間に大体の方針は決まり、月曜日に熊さんが公園課に一応の話をしておいて、陳情は火曜日にやることになっていた。砂恵子と小母さんが賛同者を集めるとして、誰がリーダになるかが残された課題である。

「本当やったら赤木先生が一番適任やけど、このことでは関わりがない。せやから、木津君がええと思うわ」と砂恵子が言い、これはえらいことになった、と伊一郎はびくついた。しかし、熊さんが、「いや、こんな事は女で口が達者でしかも愛想のええのが適任や。それに、先ずは大人数やのうて、砂恵子はんと増田はんが行って手応え探るほうが角がたたんでええな。本格的にリーダー決めて賛同者も集めてわーわー遣るのは、それからでも遅うはない」

と言い、話は決まった。

 さし当たり伊一郎は陳情要員として待機である。火曜日の結果は電話で聞くことにして、砂恵子の電話番号を教えられた。やれやれ、砂恵子の電話番号を聞くことからして公園の内外とがごっちゃになっている。世間の喧騒がもろに公園に降り掛かり始めているのだ。もとはと言えば、内外わきまえぬ砂恵子のせいであるが、彼女は公園を守る思いで行動していて、それを考えれば感謝こそすれ恨む気にはなれない。それに、たとえ鳥の楽園が出来たとしても、そこは外とは別個の存在ではなくて人と鳥の世界を結ぶ懸け橋となるべきだろう、と伊一郎の頭は相当に混乱状態であった。

 火曜日に砂恵子の家に電話すると、「すべて順調や。次の日曜までにはシートは外すとのことなんよ。詳しいことは日曜に話すわ」と言った。それを聞いてほっとしたものの、電話を切ってすぐに、事態の推移のどこかがおかしいなと伊一郎は考えた。

 日曜に公園に行ってみると、池の底のシートは取り外され、鴨達は精一杯に尻を見せて水底の草を食べている。現われた砂恵子の周りに全員が集まって話を聞いた。

「市役所の方では、方々からの抗議があって、シートを外すことを検討してたんやて。せやから、私らが行ったら、公園課の人も喜んでたのや。話しはとんとん拍子で進んで、シートを外すことになったんや」との砂恵子の話に、裏があるなと伊一郎は読み、

「しかし、おかしいやんか。なんで君等が行くまでは外さんかったんや」と、疑問を口にすると砂恵子はいたずらっぽく笑って答えた。「あはっ、なかなか鋭いなあ、木津君は。・・実はねえ、メタンの方は少々匂いがする季節を我慢すればええのやけど、葦が生えるのは余り美感上好ましくないらしいわ。それで夏場に一回は刈り取らないかんのやけど、今年は刈取りの予算を見てないからシートは来年取り外すことにしてたらしいのや」

 嫌な予感がした伊一郎は、「それで、どう交渉したんや」と詰問するように尋ねた。

「えー、ボランティアでなんとかするって答えたんよ。ご免ね、木津さん。協力してね」「あの広い池の葦を刈取るんかいな」と彼は茫然としながら呟いた。

「なんの苦学生、儂らも手伝うで」と、熊さんが言い、芝やんと東北さんも頷いている。「刈った葦はどうするねん」と、この公園で唯一現実派の伊一郎。

「林の中で腐らせたらええ肥料になるで」と芝やんが答える。簡単に言うが、大量の葦を林の中に運ぶだけでも大仕事である。伊一郎は黙って考え込んでしまった。

「私の友達も総動員して応援するわ」と、砂恵子が間髪を入れずに言うと、熊さんが乗ってきた。「へー、皆んな女学生か」

「小学生から老人まで。増田の小母さんも人集めは任しといてと言うてはったから、中年の女性もばっちりやねえ。男子学生も必要やったら集めるけど」

「いやいや、女だけで十分や。男は少なければ少ないほど、儂らのかぶが上がるわ」

「あっははははは」

「鎌の用意や、水具の用意もせないかんなあ」

と話しは伊一郎を残して楽しそうに続いている。『まあ、ええか。どうせ僕が真っ先になって働くことにはなるが、砂恵子のような娘を助けることは遣り甲斐があるではないか。誰かが公園と外の世界を結ぶ窓口になる必要があるとすれば砂恵子が適任で、しかも、砂恵子はもっとも必要とされる時に現われたのだ。その砂恵子を後から支えるのが、爺さんや熊さん、それに僕なのだ。どうやら、この公園の主役は砂恵子になったようだ』と、考え込む伊一郎を砂恵子は気になるようにちらちらと窺っている。

「よーし、砂恵子。こんな大仕事持ってきよって、葦刈りの日には水の中に引き摺り込んでやるからなあ」と伊一郎が大声で言うと、砂恵子の顔がぱっと輝いた。

「よっしゃ、儂らが陸の上から投げ込んでやる」と熊さんも乗っている。

「それぐらいでええんなら、水着を用意してきて、自分で飛び込むわ。それに鴨さんが助けてくれるわ」と砂恵子も負けてはいない。「阿呆か、その頃、鴨はシベリヤでのんびりしてるわ」

「あははは、そうか。いや、シベリヤから助けに駆け付けてくれるかもしれん」

「鴨の恩返しか」と、いよいよ漫才になってしまった。

 皆の浮き浮きとした会話を聞きながら、伊一郎は考えた。

『そうか、僕だけではなくて、ここに居る皆んなもあの伝染病に罹っているのだ。最初に発病したのは爺さんで、僕が感染し、次いで熊さん達が、そうしてとうとう砂恵子が発病した。砂恵子は、より激しい勢いで周りじゅうに病気を広めるのだ』

 そうと判れば話は簡単である。少ない人数では困難な仕事も、感染する人間を増やして一緒にやればよいだけのことだ。砂恵子は最初からこれに気付いているのだと、気楽になった伊一郎は、心置きなく馬鹿話の仲間に入ることにした。

 

 三月半ばの日曜日、季節外れの寒波が関西を覆った。雲は低くたれこめ凍てついた大気の放つどうしようもない寒さが衣服を通して錐のように突き刺さった。伊一郎と爺さんは鳥箱の取付けに励んでいたが、仕事の合間には手を擦り体を上下させては震える体を少しでも暖めようとした。さすがの爺さんも歯の根も合わないようすで、ついには唇の色が青黒く変わり話す言葉もひきつりだした。

 仕事を罷めねば倒れるのではないかと、爺さんのことを気遣い思い始めた頃には、とうとう雪もちらつきだした。静かに舞い降りていた雪もその数を急激に増し、みるみる木々は雪をまといはじめた。白い雪を頭に爺さんと伊一郎は顔を見合わせ、そろそろやめようかと眼で相談し後片付けに取り掛かった。

 道路に出たときには、微風に乗り緩やかな渦を描きながら間断なく流れる雪が視野を覆い隠していた。雪のカーテンの四方に灰色の木々の陰がいつもよりは高く覆いかぶさり、かすかに聞こえる筈の人声や鳥の鳴声、それに風に揺れる木々の触れ合う音も今日は全く絶えて、白色の世界に存在するのは彼等ふたりだけかと思えた。なんとなく不安でその存在を確認するために爺さんの方を窺うと、爺さんもまたじっと伊一郎を見詰めていた。

 雪のカーテンを音もなく潜り抜けて芝やんがすぐ傍に現われ、二人の幻想は破れた。

「熊さんが、二人を呼んでこいって、公園の事務所を特別使わしてもらうことになったんや、あんたらも体を暖めたらええわ」

 風は激しくなり雪の幕はさらに密度を増している。吹雪の中を彼等は事務所へと急いだ。雪の道を踏む音だけが周囲にこだましている。白と灰色だけで厚く塗りこめられた空と地と木々の片隅に、事務所の窓からの明かりが僅かに漏れていて、あたかも山中の避難所のように思われた。

 床も壁もコンクリート地肌剥出しの殺風景な事務所も今日ばかりは天国である。中央に置かれた石油ストーブは石油臭い匂いとともに赤々と炎を放っていて、その炎を見るだけで寒さにひきつれた皮膚が一挙に弛んだ。ストーブの周囲には折畳み椅子が並べられ、熊さんと東北はんが座り二人に笑いかけた。

 普段は閉鎖している公園の事務所を熊さんが特別使えるように段取りしたのだ。

「おーおー、先生も苦学生も寒かったやろ、ゆっくりとあったまって下さいや。先生、酒もありますから一緒にやりましょうや。苦学生はコーヒーで我慢せえよ」

 熊さんはビニール袋の中から、カップ酒と缶コーヒーを取出してみんなに配り始めた。

 普段は表情を変えたこともない爺さんが、顔をほころばせ「これは、これは、雪見酒ですか。ご馳走になります」と言いながら腰をかがめ両手でカップ酒を受取るのには伊一郎も驚いた。どうも雪は全ての人に思いもよらぬ影響を与えるらしい。いや、それとも酒が原因だろうか、とそこまで考えた時に彼は重大なことに気付いた。 なにしろ爺さんのことでは嘘を言い続けているから、話しが、すこしでもそのあたりに行き着けば大嘘はたちまち露見する。しかし、こうなっては仕方がない。伊一郎は爺さんのいつもの無口に望みをかけた。しかし彼のささやかな希望はすぐに打ち砕かれた。

 酒を飲みながら熊さん達は話し始め、そのうち、黙って酒を味わい話しを聞いている爺さんに熊さんは話掛けた。

「あんさんは、前に先生してはったんちゃいますか」との熊さんの問いに、酒が入った爺さんは気軽に答えている。

「ええ、六十で退職しましたが、それまでは大学に勤めていました」「ほう、何処の大学ですか」と熊さんにしては詮索がましい。余程爺さんのことに興味があるのか皆の眼がぎらついているが、当の本人はのほほんとして答えた。

「ええ、浪華大学の教授でした。機械工学が専門でしたがね」

「ほほほー」と全員が驚きの声を上げた。なにしろ旧帝国大学である。爺さんを大物だと言い切っていた熊さんだけは驚きもそこそこだろうが、他の者にはとても信じられなかった。爺さんは何も聞こえないようすで酒をじっくりと味わっている。

 熊さんはいよいよ勢いづいて尋ねた。

「へー、それで衛生課から声が掛かったんですな」

 あっ、とうとう、と伊一郎は思い、当然のことではあるが爺さんは怪訝な顔で問い返した。

「衛生課?、それはなんのことですか」

「いえね、市の衛生課からこの公園の仕事を請け負ってるんでっしゃろ」

 これはもういかんと、伊一郎は扉の位置を確かめ逃げだす体勢を整えた。

 彼の気持も知らず爺さんは陽気に笑った。

「あっははは、いやいや、私は趣味でやっているだけですよ」

 熊さんは横目で伊一郎をぎろっと睨み付けた。東北さんと芝やんも呆れたような顔付きで彼に目を向けている。熊さんは厳しい顔になって質問を続けた。酒の入った爺さんは少しねばつくような声で全てをあるがままに話し続けている。

 時たま伊一郎に向ける熊さんの眼には気味の悪い黄色い光が浮かんでいたが、爺さんの話が進むに連れてその光は衰え、代わりに面白がっているような色が現われている。芝やんと東北さんはこれはもう完全に楽しんでいて、にやにや笑いながら見ている。

 なんとなく最悪の状況を脱したと感じ取ったものの、己れの嘘が次々と明るみに曝される恥ずかしさに伊一郎は赤くなって下を向いていた。爺さんは冗舌な話の最後に、伊一郎が手伝うことになった経過を話してから、

「とにかく木津君は変わってるよ。いつ音をあげるかとじっとみていたが、一向にやめないんですよ。まあ、あれだけ根性のある青年は近頃珍しいと、いつもばあさんとも話しているくらいですよ、あっはははは」と、自分のことは棚にあげ伊一郎の変人振りを笑っている。熊さん達はと窺うと、三人が順に顔を見合わせては呆れ果てたとの顔をしている。爺さんと伊一郎の変人ぶりと、それに、伊一郎が話し続けた嘘の馬鹿さ加減に戸惑い呆れているのだ。

 向かいに座っていた熊さんが伊一郎の横にいる芝やんに、「ちょっと替わってくれ」と言い、二人は席を替えた。伊一郎は黙って下を向いたままである。

 横に座った熊さんが伊一郎の尻をつねり、ちいさな声で「こいつめ、嘘ばっかり言いやがって、ほんまやったらただでは済まさんとこやが、・・・せやけどまあ、ただ働きで遣っとるて聞いたから許してやるわ。けどなあ、これからこんな嘘ついたら許さんぞ」と言った。「熊さん、すんません、すんません。せやけど、どこの了解も得んと公園にあれこれ手を加えてる事がしれたら、先生が苦しい立場になると思いません?」と伊一郎も小声で言った。熊さんはじっくりと考えて、爺さんの方をちらっと見た。爺さんは二人の内緒話を気にもせず、じっくりと酒を味わっている。

「せやけど先生、公園や保全林を勝手にいじってええんでっしゃろか」と、熊さんは大声で問い掛けた。先生はとろんとした眼を向けて、

「・・そう、ずっと前に木津君からも質問されましてね、早速、市役所と保全林の持ち主の所に行きましたよ。趣旨を説明したらあっさり了解してくれました」

 その言葉に、今までの気苦労は一体なんだったのかと伊一郎は茫然となった。

 熊さんは「あっはははは」とひとしきり笑い、再び小声で言う。「苦学生よ、ええとこまで気付いたんやが、後の確認が抜けとったようやな。ただ働きして勝手な気苦労して、お前も変わっとるなあ。まあしかし、わしら全部が少々変わった連中ゆうこともたしかやなあ」

 最悪事態を切抜けたことと、全ての嘘が全面クリヤーされたことで伊一郎は心底ほっとした。暫らく沈黙を続けた熊さんはしみじみとした呟きを口にした。

「考えてみれば昔はこんな仲間が大勢おったような気がするなあ」 熊さんに芝やんや東北はんもしんみりと頷いている。

「みんな、そんなにしんみりせんでもええがな、昔話や、それにここにも苦学生みたいなええ男がおるんや。それで十分やないか」

 熊さんに忠実な芝やんは、「そらそうや、大学教授もおるんやからなあ」と熊さんに忠実な芝やんはすぐさま調子を合わせたが、

「いえ、元大学教授と言うのが正確な言い方です」と突然の爺さんの大声である。爺さんの真面目な反論に皆大笑いになった。

 爺さんも周りを見渡してから笑いの渦に溶けこんだ。

「ところで、先生、苦学生がええ根性してるのは儂もみとめますわ」と熊さんは言い、「この根性、そのままにしとくのは勿体ないから、わしゃもっと鍛え上げたりまっせ。この世の中でたった一人で生きていくだけの腕にしたてるのはどうでっしゃろか」と続けた。「ほうー」と爺さん。

「儂の知ってるこというたら、植木と左官、それに土木建築業一般や。昔は鳶もやってましたから、このあたりのことを徹底的に、ビシビシと教えることにしましてん。来週からその積もりでやりますから、よろしゅうたのんます」

 嘘に対する懲らしめだろうかと、伊一郎が思わず熊さんの顔を見たが、からかうような目付きの中には悪意のひとかけらも見られなかった。しかし、熊さんは言い出したことは必ずその通りに実行する。ビシビシやると言えば、それは言葉通りにビシビシとやるのだ。今以上に厳しい状況とはどんな事態だろうかと伊一郎は怯えてしまった。

 彼の心も知らず爺さんは、これはまた心の底から楽しそうな顔になって、

「それはいい。いずれ公園での仕事は彼が引き継ぐことになります。その為には、私の知識も彼に教えることが必要です。ビシビシと教える必要がありますな」

 いつの間にか爺さんの後継ぎになっていることに伊一郎は唖然とした。そんな伊一郎を見て全員が大きく笑い始めた。

 馬鹿話しを続け笑いさざめく大人達の横で、暖かい缶コーヒを手に眼を閉じ心を澄まして雪の降り続く気配を彼はとらえた。冬と雪、それは今彼の周りにある。だが今日の雪の気配は、すぐそこまで来た春の足音だ。春の木々の緑、夏の躍動、秋の色、公園の移り変る姿とそこに満ちあふれる命の脈動さえもが伊一郎の心にありありと映った。

 命の躍動のうちに日々が過ぎ歳月の訪れと繰り返しがあると考えた時に、突然、鴨の嘴に触れたときに感じた感動が心の奥底に沸き起こり、その波は柔らかく暖かな快感となって体の末端へと進んでいった。心一杯の幸せと共に意識は徐々に薄れていった。

 別の伊一郎が眠りから目覚めた。

 眼は閉じているのに事務所の光景が見え、部屋に輪をつくって座る大人たちと、椅子の背にもたれかかる彼自身の姿も見えている。大人達の騒がしい声と話しの内容さえもが聞こえている。視点は急激に上昇して彼等の姿は小さく凝縮していった。伊一郎は天井を越え、始めはゆっくりと徐々に速度をあげて上昇していった。上へ上へと事務所の屋根を突き抜けて昇り、雪に覆われた公園を一望するところで止まった。加速も減速も体には感じなかった。真下には事務所があり、屋根を通して明るい部屋の人々の姿が蟻のように見えている。大きな雪片が視野の横を流れ白一色の公園に降りそそいでいる。

 事務所から公園の他の場所へと視線を移したが、どこもかもが白一色である。だが、すぐに白く覆われた公園のあちこちに、金色に輝く小さな点が散らばっていることに伊一郎は気付いた。しかも光は僅かに脈動を続けていて眼をこらして見詰めると、降り注ぐ雪の流れも積雪の白い輝きも消えて、雪に覆われていた金色の粒が輝きを増しはじめた。その数は急激に増えてゆき、公園のあらゆるところが金色に覆われている。このすべての金色の粒は命の輝きだと考えるまでもなく彼には判った。公園は命に満ち満ちているのだ。周りを見渡すと公園を囲む丘と林もまた命に覆われ、全ての命は脈動しその暖かい光の波で話し合い、喜びを伝えあっている。いつにまにか彼自身も光の繋がりの一部となり、全身で喜びの脈動を続けている。

 ふと裏山の林が切れる辺りに、ぼうっと微かに銀色に輝く巨大な塊があることに気付き、それが何かと伊一郎が心を向けた丁度その時に、住宅地のほうから公園に近寄ってくるひときわ輝く金色の塊に気を取られた。しかもその輝きは彼にとって馴染みの煌めきを伴っている。ああ、あれは砂恵子に違いないと思い、銀色の物体のことは忘れてしまった。

「おーい」と声を掛けて伊一郎は目覚めた。

 彼は椅子の上にいて肩には熊さんのジャンパーが掛けてある。部屋を見回すと大人達は今は黙って物思いに耽っている。体には目覚める前の感動と脈動の余波が残り、心地よい眠りの後の鋭い感覚がある。

 扉をこちこちと叩く音が聞こえ、振り返ると扉がゆっくりと開き、流れる雪とともに、赤い傘を手に鶯色のコートに長靴を履いた姿があり、頭に銀色の粒をちりばめて砂恵子は楽しそうに微笑んでいる。ああ、これで公園の冬鳥はみな集まったのだと伊一郎は思ったが、ふと、夢の中で見た銀色の塊のことを思い出した。それも束の間のことで、すぐに心は砂恵子を引入れての楽しい団欒へと移っていった。

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