2024年4月28日日曜日

4月28日の植田総裁の真意はどうか、と、5月8日の植田総裁の修正発言

 ほんとうかな?
それが真実かどうかは、これから判る。
なお、同日経の5月8日の記事では、植田総裁が円安についての発言を修正したとの記事があり、これも掲載した。

植田氏、連続利上げ布石か

市場が見逃した「タカ派ぶり」 基調的な物価上昇に自信

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日銀が26日の金融政策決定会合で政策金利を据え置き、国債の購入方針も変えなかった。何らかの円安への対応に期待していた市場は「ゼロ回答」を吹聴し、一段の円売りに走った。

だが、円安騒ぎの陰で日銀は連続利上げに向けた布石を着実に打っている。円安でなかったら、市場はむしろ植田和男総裁が率いる日銀の「タカ派ぶり」に驚いていたかもしれない。仮に円安で追い込まれたふりをしながら金融政策の正常化への舞台を整えているのだとしたら、かなりの高等戦術と言えそうだ。

「基調的な物価上昇率」という言葉の分かりにくさが、混乱を呼んだのかもしれない。植田氏は会合後の記者会見で「基調的な物価上昇率に、ここまでの円安が大きな影響を与えているということではない」などと述べ、円安対応に慎重と受け止められた。

伏線は18日の米ワシントンでの会見にあった。植田氏は円安について「基調的な物価上昇率に影響を与えるという可能性はありうる」と前置きしたうえで「無視できない大きさの影響が発生した場合は、金融政策の変更もありうる」と語った。「基調的」という言葉に注意を払わなかった市場関係者は、円安に対応した利上げを視野に入れていると解釈した。

ところが今回の会見で真意を説明すればするほど「円安に金融政策で直接対応するつもりはない」という日銀にとっての「正論」がクローズアップされ、円売り勢を勇気づける結果となった。

植田氏が繰り返した「基調的」という言葉は、一時的な要因を除いた、長い目で見た「物価の実力」のこと。表面上の物価上昇率は目標の2%を超える期間が長引いているが、基調はまだ2%を下回るとみている。

円安はまず輸入物価を押し上げ、国内で価格転嫁が進むにつれ、消費者物価に上昇圧力をかける。次に、この物価高の圧力が賃金上昇に波及すれば、緩やかな物価上昇が自己回転する「好循環」につながる。この経路によって動くのが基調的な物価上昇率だ。

円安という要素は、最終的に好循環のさらなる進展をもたらし、2%の基調的な物価上昇の定着に向けて寄与していると確信できて初めて、利上げの判断に関わってくる。円安が金融政策を動かすとすれば、そんな回りくどい道のりになる。

気をつけたいのは、日銀が見据える「本丸」の利上げシナリオは、必ずしも円安と直接の関係がないことだ。決定的に重要だとみているのは、今回の円安より前から進み始めている好循環の見極めだ。

今年の春季労使交渉では大企業を中心に歴史的な賃上げがまとまりつつある。中小企業への波及がみえ、人件費増が販売価格へと転嫁される流れが確認できれば、好循環が続く確度が高まる。追加の利上げは十分正当化される。

日銀は円安に関係なく、基調的な物価上昇率が2%に上向いていく可能性に自信を示している。今回から2026年度まで予測期間を延ばした「経済・物価情勢の展望(展望リポート)」では、基調的な物価上昇率が「見通し期間後半には『物価安定の目標』とおおむね整合的な水準で推移する」とうたった。

植田氏は経済や物価が想定に沿って動けば「政策金利を引き上げ、金融緩和度合いを調整していく」と明言した。さらに最終的には「政策金利は、ほぼ中立金利の近辺にあるという展望を持っている」と踏み込んだ。

中立金利とは、日本経済の現状にふさわしい景気をふかしも冷ましもしない政策金利の水準のこと。具体的な水準は「かなりの不確定性がある」として明言を避けたが、日銀内には「1~2%強」との見方も聞かれる。実質ゼロ金利の現状から26年度にかけて、その辺りまで利上げを続ける可能性があるということだ。思惑通りに進む保証はないが、円安に追い込まれたようにみえる構図のなかで植田日銀が着々と練る利上げ計画にも注意を払ったほうがよいだろう。

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5月8日の記事

日銀総裁、円安巡る発言を修正「物価に影響しやすく」

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日銀の植田和男総裁が円安に関する発言を軌道修正している。4月の記者会見では「基調的な物価上昇率に大きな影響を与えていない」と繰り返し、円安が進行した。5月に入り「政策運営上、十分注視していく」と表現を改め、さらに「過去と比べ、物価に影響を及ぼしやすくなっている」とも指摘した。

日銀が円安を容認しているとの市場の見方を払拭し、円安の進行に歯止めをかけようとしている可能性がある。

4月26日の金融政策決定会合で市場には日銀が円安の食い止めにつながる対策や発言を打ち出すとの見方があったが、日銀は金融政策の維持を決めた。

その後の記者会見で植田総裁はこれまでの円安が基調的な物価上昇に与える影響について現時点で無視できる範囲か問われて「はい」と答えた。こうしたやりとりを市場は円安容認と受け止め、会見中から円相場は下落した。

4月29日には1ドル=160円台と34年ぶりの水準まで円安が進んだ。政府・日銀は認めていないが、4月29日、5月2日の2日間で財務省による円買いの為替介入があったとみられている。

日銀は円安を通じた輸入コストの上昇による物価上昇は一時的と捉え、賃上げを伴う「基調的な物価上昇率」を重視している。そのため植田総裁は「引き続き為替市場の動向や経済・物価への影響を十分注視していきたい」と4月に強調した。

これを5月に入ってからはより直接的な表現に改めた。

7日に首相官邸を訪れて岸田文雄首相と面会後、記者団に「円安については日銀の政策運営上、十分注視をしていくことを確認した」と述べた。「基調的な物価上昇率にどういう影響が出てくるかについて注意深くみていくという姿勢だ」とも語った。

8日の衆院財務金融委員会では「最近の円安の動きを十分注視している」と改めて強調した。「過去と比べ為替の変動が物価に影響を及ぼしやすくなっている」との見解も示し、円安が物価上昇につながりやすくなっていることを示唆した。

日銀は4月会合で公表した経済・物価情勢の展望(展望リポート)では「基調的な物価上昇率が上昇していけば、金融緩和度合いを調整する」と追加利上げの姿勢を示した。ただ、会見では為替の質問が相次ぎ、そこでのやり取りも材料に円安が進んだ。

時系列だけみれば会見をきっかけに為替介入までに発展した可能性があることから、市場から日銀が発言を修正しているとの見方が出ている。

野村総合研究所の木内登英氏は「4月の記者会見で植田総裁が円安容認と受け止められかねない説明に終始したことを問題と捉え、日銀が修正する機会をうかがっていた可能性がある」と指摘している。

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