2020年9月28日月曜日

安倍の政権下で、日本は取り戻せない失敗を続けた。

落日を取り戻すって、知識のない政治家や官僚には難しいだろうな。 

 日経新聞抜粋  

科学技術が経済や安全保障を左右するいま、日本の研究力低下が止まらない。米欧の後追いを脱却しようと、国は1996年度に科学技術基本計画を打ち出し、90年代後半には米国などに次ぐ地位を誇った。その後も世界のけん引役を担うはずだったが、日本の研究力は中国などの後じんを拝し、今では世界9位に沈んだ。日本はどこでつまずいたのか。落日の四半世紀を検証する。

「科学研究から経済成長に必要なイノベーションを搾り取ろうとしたが、明確な成功はなかった」。英科学誌ネイチャーは8日付の論説で、約7年半にわたる安倍政権の科学政策を総括した。

安倍晋三前首相は「世界で最もイノベーションに適した国を造る」として、出口を重視するトップダウンの大型プロジェクトを相次いで立ち上げた。首相がトップの科技政策の司令塔を「総合科学技術・イノベーション会議」に改称するなど、イノベーションを重視したが、日本の研究力低下は止められなかった。

注目論文は減少

安倍政権下で策定され、20年度に終わる第5期基本計画は、初めて世界が注目する被引用論文の数などを目標に掲げたが、多くは未達で終わる。

論文の数は国の基礎科学力を示す。科学技術・学術政策研究所によると被引用数が上位10%の注目論文シェアで、日本は96~98年の平均で世界第4位だったが、16~18年は第9位に沈んだ。

注目論文数は中国が42倍、米国2割増と多くの国で増えたが、日本は1割減った。主要国で日本だけが取り残された。

この四半世紀、国主導で世界トップ級の研究体制を目指してきたはずだった。2001年ノーベル化学賞受賞者の野依良治名古屋大特別教授は「科学技術基本法の精神は正しかったが、(明治以来の講座制などの)世界的に異形のシステムが実践を阻み続けた」と悔やむ。

95年に議員立法で成立した基本法は、科学技術が「我が国及び人類社会の将来の発展のための基盤」として、国の役割を強調した。成立に尽力した尾身幸次元財務相はかつて「(欧米から)技術導入できた時代は終わった。自ら未踏の分野に挑戦し、創造性を発揮して未来を切り開かねばならない」と語っていた。

90年代の日本はバブル経済崩壊の傷口が広がっており、次世代の産業の種を育てる狙いもあった。基本法に基づいて96年度に始まった第1期基本計画は、単年度主義の予算編成の常識を破った。5年間にわたる政府の研究開発投資の目標額を17兆円と設定し、達成した。手応えがあったのはここまでだった。

日本に戻らず

第2期以降も投資額の目標を掲げ、「選択と集中」や「イノベーションの推進」などを打ち出したが思惑通りに進まない。最たる犠牲者が飛躍の源泉となるはずの若手研究者だ。「日本の若手が置かれた環境は日米欧中の中で最も苦しい」。脳神経科学者で米カリフォルニア大学アーバイン校の五十嵐啓アシスタントプロフェッサーは嘆く。

五十嵐氏が日本神経科学学会で優れた若手をたたえる奨励賞を海外で受賞した人の行方を調べたところ、9割が日本に帰国せず海外で自身の研究室を持ったという。五十嵐氏も英科学誌ネイチャーに論文を発表したが日本では任期付きポストしかなく、海外に残った。

欧米や中国では、優れた業績をあげた若手は研究室を主宰するポストと研究室立ち上げに必要な資金を手にする。五十嵐氏は大学から5000万円を用意された。外部資金も合わせて5年で4億円を集めた。ノーベル賞級の成果の多くは30~40代の研究だ。

日本では旧帝大を中心に准教授や助教は教授の下に集うメンバーの一人にすぎない。なぜ若手が自由に研究できる環境が整わないのか。海外では、独立資金を提供する官民の予算があり、助教や准教授クラスの若手にも思い切って研究室の運営を委ねる傾向にある。

日本は大学の懐事情の厳しさが若手研究者を直撃する。04年の国立大学法人化で産学連携などが進んだ一方、運営費交付金を減らして大学は人件費を抑制した。有馬朗人元文相は「交付金を削減したことが大きな間違いだった」と憤る。研究者の卵である博士課程の学生にも悪影響が及ぶ。博士課程進学者は03年をピークに減少傾向だ。

「日本は人件費が無料だから良いんです」。野依氏は日本の大学教授にこう言われてあぜんとした。野依氏は「博士課程の学生はただ働きで、日本の現状は憲法の精神に反する」とあえて憲法を持ち出して批判する。

問題の根源は国もわかっている。菅義偉首相のもとで大詰めを迎える第6期基本計画の策定を巡り、8月に出た検討の方向性では「研究力強化の鍵は競争力ある研究者の活躍であるが、若手研究者を取り巻く状況は厳しい」と指摘した。1月には若手研究者の支援策を公表したが、抜本改革にはほど遠い。

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