2022年8月4日木曜日

僕の大学院生活とそれから

 ときどき思い出すことを書き続けて、はっと気づいた。
課長の価値観と僕の価値観が全く違うので、彼や彼と同様の考え方の上司の意図が理解できなかった理由に漸く気づいたのだ。
僕は大学院で、流体力学の教授村田進先生の下でテーマを与えられた。横断流送風機は、今では殆どの電車車両で使われている天井に車体の方向にずっと伸びているエアコンに使われている送風機で、送風機内での流れは羽根車に関して非対称で、回転する羽根車の上から入り下から出る。当時はまだ、その送風原理が解析し始められた時期で、その流れ特性を解析するのが僕のテーマだった。過去に提出された僕の先輩が書いた論文を元に、送風機の内部案内羽根が設けられた場合の性能を解析及び実験するテーマだった。
僕の先輩は、案内羽根の無い場合の流れを解析していたが、その計算方法は案内羽根のある場合には全く適用できなかった。僕の大学院生活は、これを先ずは解析することを村田先生から任されて始まった。その最初の一週間を研究室に籠って考えたが、何としても解けなかった。そこで、村田先生に相談したら、「うむ、やってみよう」と答えた。何と、翌日にはⅹ複素面での水平線を複素変換して円形のファンになる式を提示してくれた。そこで複素平面にて流れの式を作りこれを逆変換すれば平常面でのファンの流れ式が出来る。確か、流れ方程式は積分式になり、これの解析は難しいので、数値計算することにした。一般に流体方程式を式解析できるのは極めてまれなケースなのだ。当時、阪大には、テープに穴あけをして全くの機械語で解析する電算機があった。テープへの穴あけから電算機の操作まで全て自分一人でやるのだが、複雑な式と数多くの数値を入力しての数値計算は、穴あけも含めて全て自分でやるのだが、穴あけを一か所だけ間違っただけで、これを修正することで解析は出来た。が、これはあくまで力仕事だ。なお、僕が卒業してから、小川助教授が積分式を解いたのだから驚きだ。僕の大学院2年目は実際に機械装置を使っての性能実験で、村田先生が三井三池製作所に実験用送風機の製作を依頼済みで、三井三池の九州工場に行き、一週間程、送風機の図面を書き、その後装置が研究室に着くと、それを設置するのだが、架台材料の切断、架台の製作と取付けを独力でやった。更には実際の送風機性能実験、送風機内の空気の流線測定、それに、真夜中の騒音測定、更に、煙を使っての流線測定等、全てを一人やった。実験室では、ドクターコースの先輩たちや同輩達も同様に、各人が頑張っていたから、それが当然なのだ。
要するに、全てを単独でやり遂げるのが僕の受けた教育だった。
大学院マスターコース後は、村田教授や小川助教授の、特に流体力学解析能力にはとても及ばないと、ドクターコースは諦めた。ただ今になって気付いたが、数学も英語能力と同様に、継続しつづければ、ある時には、突然理解の峠を越えて、そのような式も解けるようになっていただろうと思う。そこまでは学ばなかったことを悔いている。
つまり、大学や大学院での授業での貴重な講義を、完全に理解し操れるまでに繰り返しての勉強が必要だったのだが、途中で、ここまでで試験は通るだろうと怠けたのが駄目なのだ。実は、高校ではとことん勉強したが、大学の授業内容は、そのレベルでは駄目だったのだ。
この大学院生活に比べて、会社での仕事は、技術解析も含めて、全てが力仕事で、僕が単独で出来ないことはなかった。誰に相談せずとも出来る仕事ばかりであった。ただ時間的期限はあるので、その分を、時間を惜しんで頑張って突き進めば良いだけで、誰に相談する必要もなかったのだ。しかも会社での仕事で、微分方程式を解いたのは一回だけで、回生制動についての計算では、制動力が回転数に比例するリニアーな外力の解だから容易に解けたし、ただ、実を言うと、新居浜で水平式クレーの引っ込み停止での吊り荷の挙動は、コリオリの座標変換が必要で、この解析は同期の馬場洋一郎の助言を得た。


 

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