2023年9月3日日曜日

日本式TQCと習思想

 会社では、品質管理手法なるものが、定期的に新しく形を変えて蔓延した。仕事はそっちのけで品質管理手法を習い、これを実践することが、仕事よりも優先された。社長が変わるとまたまた新しい手法とテーマが導入される。だから、別に前の社長の時にぶち上げたテーマを成功させる必要はなく、新しい社長の要求に従って新しいテーマをぶち上げれば良いわけだ。この品質管理テーマやワークが、仕事での成果より社長に迎合するには効果的で、社長の覚えをめでたくすれば、上に引き上げられるわけだ。今、中国では、同様の事が行われているらしい。中国の実力が衰えるなり逡巡する事態は、日本にとっては絶好のチャンスとも言えるだろう。
中国の実情は、日経の風見鶏の記事に記載されていて、習思想学習に関する冗談は、会社時代のTQCへの冗談と全く同一なので噴き出してしまった。

ただ、今になって思うのだが、会社の指導者たちは、TQC活動の成果よりは、自分への忠誠心を調べるのが重要だったのだろう。
習主席も同じ思いなのかとも思う。
指導者って面倒な連中だ。

「中国式鎖国」への備え 親中・反中の二元論から脱却を

風見鶏

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中国で最近、こんな冗談交じりの話を聞くようになった。「忙しくて仕事をするヒマがない」。何がそんなに忙しいのか。「習近平(シー・ジンピン)の新時代における中国の特色ある社会主義思想」の学習だ。

中国共産党は現在「習思想を徹底学習するテーマ教育」を展開中だ。政府、企業、大学などあらゆる組織で上から下まで勉強会を繰り返す。幹部らは習思想の理解を競う論文執筆に大わらわ。少人数の読書班では習氏の論述集を何冊も読み込み、意見を述べ合う。

中国は今、不動産危機や失業問題、人口減少など様々な難問に直面している。そのさなか中国のエリートらが必死なのは「習思想の学習にどれだけの時間を費やすか」とのアピールだ。

そして政策立案で優先されるのは「中国式現代化」や「共同富裕」など「いかに習氏の教えや党の指導に忠実か」が基準となる。

習政権3期目以降、中国と世界の乖離(かいり)はますます広がった。米国は経済の米中デカップリング(切り離し)を修正したが、中国は対話のための最低限のコモンセンス(共通認識)というべき分野でデカップリングを断行している。

その必要性から最後まで国際化されていた金融分野でも「例外は捨て去る」と宣言した。金融政策を主導するのは党の中央金融委員会という新組織。発言権を持つのは何立峰副首相や鄭柵潔国家発展改革委員会主任、劉昆財政相など習派の厦門大学閥で占められた。

中国人民銀行トップはかろうじて欧米での研究経験を持つ潘功勝氏だがヒラ党員で存在感は薄い。世界の金融界と対話しようとの意思は感じられない体制だ。

中国人民と国際社会を隔てる「ガラスの長城」も厚さを増している。改正反スパイ法施行で中国人と外国人の交流リスクは高まった。同じ土地に暮らしていても別々の空間にいるような浅い関係となってきた。

習政権は今も改革開放や外資の投資拡大を呼びかけているが、中国の人々は他国とは全く違う世界観の中に封じ込められつつある。外に開いたまま実は閉じた「中国式鎖国」の状態だ。

世界と乖離する中国を前に日本は新たな戦略構築を迫られる。まずは「二元論」からの脱却が必要だ。親中か反中か、中国依存か中国離脱か。そんな議論は意味を失いつつあるためだ。

東京電力福島第1原子力発電所の処理水問題を巡る対応からもわかるように、中国は中国の「常識」と「理屈」から出てこない。過去のような「日中友好」を望める時代は過ぎた。

一方で、10億人を超す市場でしたたかに稼がずして経済成長は維持できない。中国との対峙も経済力があってこそ。「リスクをとって日本の成長に寄与する企業」のバックアップ体制を日本政府は米国と連携しながら早急に確立すべきだ。

注意しなければならないのは今後「文革2.0」ともいうべき閉鎖社会を嫌い中国から逃れてくる「新華僑」が増えるであろうことだ。活力あるアントレプレナーを呼び込む環境を整えるとともに、平等すぎる外国人受け入れ制度の改正など事前準備も必要となる。

移民の選別、スパイ対策、不動産購入の制限、各種外国人料金の設定などが検討課題となる。さもなければ早晩、中国からの人口や資金の流入が日本社会に混乱をもたらす時が来る。

我々は世界の経済構造が変動する瞬間を目にしようとしている。閉じられた大国「中国」と世界に広がる新たな「大中華経済圏」――。習氏が力説する「100年に1度の変革の時」にこのシミュレーションは含まれているのだろうか。

(中国総局長 桃井裕理)

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