2021年3月4日木曜日

会社や社会にDXを推進するのは、なかなか難しい。

 DXとは要するに、電子化、コンピュータ化を、会社業務の上流から下流までの業務に全て適用することを意味する。つまり、これを社内や社会に適用することをDX化と言うわけだ。
言うのは簡単だが、実行するのは難しい。
僕の所属した、運搬機事業部では、ほぼ失敗したまま事業部は無くなってしまった。その後を継ぐ、搬送システム部門も未だに成功していないだろう。
その失敗は、それを担当する人員が、実務を殆ど知らない人間が、突然に、DXを実施しろと命令されるのが殆どだからである。そんな異常な事態が起こるのかと思われがちだが、実際の社会では、従来の手順に拘らない人間が改革を担当する方が改革を行い易いとの論理らしい。実務と言うのは、そんなに生易しいものではない、との認識を、実務を知らない上級職達は考えないのだ。上級職者は命令すれば事は進むと考えているのだが、実務としては、その命令されたことを、実務に堪能な社員が、組織に合わせて運用しているわけで、実際には何ら簡単なことでは無いわけだ。その複雑な手続きを、実務を知らない人間がDX化することは、ほぼ不可能で、出来た電子化システムは、ほぼ使われないままに、DX化が出来たとされるわけだ。それに比べて、自動倉庫部門は、見積り用技術計算システムと、製造標準化システムが、連携はされないが、それぞれがかなりのレベルまで出来ていた。おかげで運搬機事業部から追い出された僕が、自動倉庫部の、それも、最先端のSEとして客先との交渉や見積もりに従事したが、かなり容易にその仕事に適用出来て、かなりの受注を果たせた。
DX化することは、新しい社員を容易に古参社員レベルに教育できるとのメリットもあるのだ。
逆に言うなら、DX化とは業務に習熟した社員にとっては、極めて簡単なことなのだが、それを知らない指導者は、DX化にはほぼ失敗するわけだ。そんな失敗を、住友重機械では、僕は何度も見ている。

改革に失敗 3つのワナ

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デジタル技術で事業を変革する「デジタルトランスフォーメーション(DX)」を推進する企業が増えている。ただし、ボストン・コンサルティング・グループ(BCG)によるとDXに成功した国内企業は14%にとどまる。失敗の原因は何か。専門家への取材から課題と解決策をまとめた。

(1)トップの意識低く SOMPO、社長が変革先導

経営トップに当事者意識がない――。専門家たちは、失敗する企業の共通点について一様にこう話す。積極的にトップが関与しない限り「DXが小さい取り組みになり、大きな成果を出しにくい」(BCGの長谷川晃一マネージング・ディレクター&パートナー)。

大手鉄鋼業のある事業部門の取り組みが典型例だ。社長の指示は「とにかくDXを推進しろ」の一点張りで、目的やデジタル技術で実現する事業の姿などは示さない。聞いても「現場で考えろ」と押し戻されるだけだったという。

推進役を命ぜられたIT(情報技術)部門は、裁量の範囲内でデジタル化施策を立案。iPadを使った業務のペーパーレス化を試みた。無事にシステムは完成し一部の文書を電子化できたものの、業務の進め方は以前と変わらなかった。掛け声倒れの失敗プロジェクトと見なされている。

「事業変革を伴わない業務改善プロジェクトは、DXとは呼べない」。コンサル大手のアクセンチュア(東京・港)の山根圭輔マネジング・ディレクターは指摘する。

BCGの調査によれば、日本企業の67%はデジタル技術を「現在のビジネスモデル効率化を可能にするもの」と答えた。既存業務の効率化をDXと呼んでいるに等しい。これに対し33%が「ビジネスモデルの大幅な変更・拡張、または新規ビジネスモデルの開発を可能にするもの」と回答した。

重要なのはトップの姿勢だ。自社の事業モデルがどう変わるか方向性を明確に示す必要がある。

DXのビジョンを社内外に示している経営者の一人がSOMPOホールディングスの桜田謙悟社長だ。健康情報など「リアルデータを集め、分析することで新しいビジネスモデルを創造する」と話す。グループが運営する介護付き有料老人ホームで入居者の許諾を得て睡眠データなどを取得。体調の変化を素早く検知することに成功した。別のグループ会社でデータ解析サービスも始めた。

(2)推進役の能力不足 三菱ケミ、プロ人材招く

推進組織のスキル不足も失敗の要因となる。日経リサーチが約2千人のビジネスパーソンを対象にした調査でも、DXの課題として最も多かったのは「人材・スキルの不足(62%)」だった。

DXでは事業の進め方を抜本的に変更するため、社内の複数の部門をまたいで業務プロセスを見直す必要が生じる。だが「複数部門の状況を理解して、最適な業務のあり方を再構築できる人材は少ない」と野村総合研究所子会社、NRIデジタル(横浜市)の雨宮正和社長は話す。

デジタルトランスフォーメーション研究所(東京・千代田)の荒瀬光宏代表取締役は、IT部門にDXの推進役を任せる慣習を問題視する。「多くの企業のIT部門は、事業部門の依頼を受けてシステムを構築する受け身体質。全社の変革を先導するスキルを持ち合わせていない」と話す。

日経リサーチの調査によれば、DXについて「IT・システム部門を中心に進めている」と回答した割合は全体の36%で最も多かった。

推進部門に適切な権限が与えられていない場合も問題だ。社内外から必要な人材を集めたり、予算を確保できたりしなければ、プロジェクトを成功に導くのは難しい。

参考になるのは三菱ケミカルホールディングスの取り組みだ。2017年にDX専門組織を立ち上げると同時に、日本IBM東京基礎研究所の所長を務めた岩野和生氏を最高デジタル責任者(CDO)として迎え入れた。岩野氏の広い人脈で、データサイエンティストなどの専門人材を招き、精鋭チームを構築した。

以降、大小含めて年間100件ほどのプロジェクトを進めてきた。画像解析技術を使った生産ラインの品質チェック自動化などを実現している。

(3)現場を巻き込めず コマツ、内外でビジョン共有

トップの姿勢があいまいだと、事業部門の反発を招きかねない。社内の抵抗勢力を変革に巻き込めず、DXが頓挫するケースは多い。

中堅自動車部品メーカーでIT部門がデジタル技術を活用したサプライチェーン改革を企画した。営業や生産などの担当者を集め将来構想について議論しようとした。

ところが業務の変更に現場が猛烈に抵抗した。既存業務の仕方は長年かけてその部門に最適化されている場合が多く、現場担当者の立場では変革が非合理に感じてしまうからだ。建設的な意見が出ないどころか「今のシステムの使い勝手をよくしてほしい」と営業や生産の担当者がまくしたて、サプライチェーン改革の構想は立ち消えた。

冷めている事業部門を巻き込むには、経営トップが示したビジョンをわかりやすく社内に浸透させる必要がある。

DXの先進企業として知られるコマツが活用するのが動画だ。同社は建機の自動運転などで現場作業を抜本的に見直す「スマートコンストラクション」を推進する。デジタル化で将来の建設現場がどう変わるかをコンセプト映像にまとめた。社内外の関係者に協力を求める際などに見せてDXに対する理解を促す。

「既存事業が問題なく収益を上げられている時期は変革を実行しにくい。コロナ禍の今はDXを進める絶好のチャンスだ」とNRIデジタルの雨宮社長は指摘する。

(矢口竜太郎)

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