安倍首相の遣り方をまねているのだ。
【ワシントン=鳳山太成、パリ=白石透冴】新型コロナウイルスで制限した経済活動の再開をにらみ、各国が検査の大幅増加へ動き出した。日本は1日2万件の検査を目標とするが他国との差は大きく、人口比ではドイツが日本の14倍、米国も同5倍の目標を掲げる。経済再開に向けて感染の実態把握は不可欠で、日本がこのまま検査を増やせなければ緊急事態宣言解除のハードルは高い。
米国は現在、1日23万件のペースで感染の有無を調べるPCR検査を実施している。5月中の目標として、4月中旬(1日15万件)の2倍の「週200万件(=1日29万件)」を掲げる。
現在の新規感染者は平均で1日2万7千人程度。米政権は陽性率が10%に下がる程度まで検査を増やす計画で、感染者が現在と同じなら27万人を検査することになる。「感染者1人あたり平均5人の濃厚接触者が出る」(米厚生省幹部)とみており、接触者13万5千人にも検査が必要だ。合計40万5千人になり、感染者が現状のままだと検査件数はまだ足りない。
米政権は外出制限の効果で感染者が今後減っていくことを想定する。接触者もあわせて十分な検査ができるくらい感染者が減った州から、飲食店の営業を条件付きで認めるなど、段階的に経済活動を再開する方針だ。
フランス政府は5月11日から商店などを再開するのにあわせ、検査能力を現状の実施件数の5倍にあたる1日10万件に増やすと発表した。外出する人が増えることで新規感染者が最大で現状の2倍の1日3千人に伸び、濃厚接触者を25人と仮定。全員をカバーしたうえで、余裕をみた検査能力を確保する。
ドイツは4月中に1日20万件、英国は同10万件を目標としていた。ドイツの直近の検査数は同7万件、検査能力は同14万件あるとするが、目標達成は遅れている。
検査を増やすには、人員や医療品の確保が不可欠だ。米政権は大手薬局チェーンに検査場設置を要請。CVSヘルスは5月中に最大1千カ所で1日5万件を実施する。検査用の綿棒や試料は、非常時に大統領権限で企業に命令できる「国防生産法」で増産を求める。
米は6、7時間かかるPCR検査に加え、その場で結果が出る15分程度の「抗原検査」の普及も急ぐ。ウイルス特有のたんぱく質(抗原)を検出するもので、過去に感染したことがあるか調べる「抗体検査」とは別だ。抗体検査は発症直後は診断しづらいため、抗原検査でPCRを補完する。
日本政府は1日2万件を目標に掲げ、同1万5千件を実施できる体制を整えたとしている。ただ実際の検査件数は同8千~9千件にとどまる。
人口比でも日本の検査目標は見劣りする。人口1人あたりの目標件数はドイツが日本の14倍、英仏が9倍、米国は5倍だ。他国は経済再開と検査拡充をセットにして出口戦略を立てており、日本の出遅れは否めない。
検査の人手不足などを補おうと、日本政府は検体採取業務を歯科医師にも認めると決めたほか、ドライブスルー検査の実施を自治体に促すといった対策を講じる。ただ安倍晋三首相も国会答弁で「目詰まりや地域差がある」と認める。検査拡充で感染実態が把握できなければ、緊急事態宣言の解除はおぼつかない。
経済活動の正常化にはさらに検査拡充が必要との試算もある。米ハーバード大は米国民全員が毎月2回検査できる1日2千万件の検査体制を提言する。一度陰性になっても安全と言えないためだ。シンガポールは当初封じ込めに成功したとみられていたが、外国人労働者の寮で感染が再び広がった。労働者の大規模検査が必要になり、人口570万人の同国の検査数は12万件を超えた。
0 件のコメント:
コメントを投稿