2024年5月9日木曜日

日経の「米経済 本当に強いのか」と「円安→株高 復活の兆し」

 日経の記事がFXには殆ど役に立たないのだが、まぁ、経済界の状況を把握するのに役立つかと「米経済 本当に強いのか」と「円安→株高 復活の兆し」を転載しました。

米経済は本当に強いのか 消費堅調、雇用は過熱和らぐ

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白井さゆりさんの投稿白井さゆり

円相場が不安定な動きを続けるなか、米景気への関心が高まっている。経済指標は強弱が混在しており、個人消費は堅調で、過熱感が和らぎつつもなお底堅い労働市場が家計を支えている。他方で高金利環境の長期化が住宅需要を再び冷やし、製造業やサービス業の景況感は「不況」水準に入った。インフレ圧力はなかなか弱まらない。5つの指標から米経済の現在地を探った。

米商務省が毎月発表する米小売売上高は、直近の3月で前月比0.7%増と市場予想(0.3%増)を上回り、2カ月連続で前月比プラスとなった。米国内総生産(GDP)の7割を占める屋台骨の個人消費は、長引くインフレ下でも底堅い。

業種別で見るとオンライン小売りを含む「無店舗小売り」のほか、ガソリン価格の上昇でガソリンスタンドでの支出が伸びた。インフレや高金利で低所得層の余力が細る一方で「個人消費の多くを占める上位50%の所得層は、引き続き健全な状態にある」(米レイモンド・ジェームズ・インベストメント・マネジメントのチーフマーケットストラテジスト、マット・オートン氏)との指摘がある。

こうした米消費を支えているのは、なお底堅い労働市場だ。米労働省が3日発表した4月の雇用統計によると、非農業部門の就業者数は前月から17万5000人増え、24万人程度だった市場予想を下回った。だが単月の振れ幅をならす3カ月移動平均でみると24万2000人で、新型コロナウイルス流行前の2019年の月平均(17万人弱)を大幅に上回る水準で推移している。

4月の失業率は3.9%と前月から0.1ポイント上昇し、平均時給の伸びも市場予想を下回った。全般的に労働市場はコロナ禍後の過熱感が徐々に和らいでいるが、まだ冷え込みからは遠い状況だ。

もっとも高金利環境の持続は経済活動に様々な形で影響を及ぼしている。

米連邦準備理事会(FRB)による利下げ観測の後退で打撃を受けているのが、住宅市場だ。米住宅市場の大半を占める中古住宅販売件数は3月に前月比で4.3%減少し、約1年半ぶりの減少率の大きさを記録した。

米連邦住宅貸付抵当公社(フレディマック)が集計する米国の30年固定の住宅ローン金利(週平均)は年始に一時落ち着いたものの、直近では7.22%と5カ月ぶりの高水準で推移する。米商務省が公表している住宅着工件数は3月に前月比14.7%減少し、7カ月ぶりの低水準となった。住宅投資は米GDPの4%程度にとどまるが、家具の購入など関連する支出も含めると景気に大きな影響を与えうる。

企業の景況感も足元で悪化している。米サプライマネジメント協会(ISM)が3日発表した4月の米非製造業(サービス業)景況感指数は前月から2ポイント低い49.4となり、好不況の分かれ目となる50を1年4カ月ぶりに下回った。3月に50を上回った製造業の景況感指数も4月に再び50を下回り、いずれも不況水準に落ち込んだ。

引き続き米経済の最大の懸念材料となっているのが、インフレだ。米労働省が発表した3月の米消費者物価指数(CPI)は前年同月比の上昇率が3.5%と2カ月連続で伸びが加速した。エネルギーと食品を除くコア指数も同3.8%と前月から横ばいだった。

FRBが1日に開いた米連邦公開市場委員会(FOMC)後の記者会見でパウエル議長は「ここ数カ月のインフレ率は我々の物価目標である2%に向けたさらなる進捗を見せなかった」と語った。市場の一部で警戒されていた再利上げ論には否定的な見方を示したものの、利下げに動くにはインフレ鈍化の証拠を確認する必要があると強調した。

金融引き締めの持続が適度な景気減速につながり、インフレを冷ます軟着陸につながる展開をFRBは期待する。だが金融市場では「引き締め過ぎ」が景気の急減速を招いたり、景気が冷え込む一方でインフレは高止まりするスタグフレーションに陥ったりすることを懸念する声もある。過熱感が解消されつつある米経済の落ち着きどころが、金融政策や市場の行方も左右する。
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「円安→株高」復活の兆し

トヨタ株、減益予想でも安定

8日の東京株式市場で、取引時間中に2025年3月期の純利益が前期比で28%減る見通しを示したトヨタ自動車の株価が一時2%高となった。今期の想定為替レートは145円で、現在の円安水準が続けば業績上振れの余地は大きい。4月は鳴りを潜めていた日本株の「円安・株高」の兆しとなるかもしれない。

トヨタの今期の営業利益は日本企業で初めて5兆円の大台に乗せた前期から一転し、20%減の4兆3000億円を見込む。決算発表直後は4%安まで売られた。

その後は急激に切り返し、8日終値は0.56%安と、1.63%下げた日経平均株価よりも底堅かった。UBS証券の中冨良祐株式営業部長は「1兆円の自社株買いをサプライズと感じたヘッジファンドなどが急いで買い戻したことが考えられる」と指摘する。

業績への期待も崩れていない。トヨタ株に投資する、信託銀行系ファンドマネジャーは「為替の前提が保守的で、業績下振れリスクよりは上振れ期待の方がはるかに大きい」として、買い増しを検討したいと話す。

トヨタはこれまでも期初の業績見通しを公表する際は、想定為替レートを実勢より円高に設定することが多かった。前期も最初は1ドル=125円とし、8750億円の減益要因と見込んでいた。最終的には1ドル=145円となり、6850億円の増益要因となった。

トヨタは対ドルで1円の円安が営業利益を500億円程度押し上げる計算だ。今期は足元の1ドル=155円程度の水準が続けば、約5000億円の増益要因となる。

トヨタなどの日本株はこれまで「円安・株高」に相関がみられたものの、日本政府・日銀の円買い介入による急騰への警戒感から、4月以降は円安に株高がついていけなくなっていた。ただ円買い介入とみられる動きが出て「為替の波乱要因が出尽くし、日本株は円安・株高に素直に反応しやすくなった」(野村証券の須田吉貴クロスアセット・ストラテジスト)との見方がある。

もちろん円安には負の側面もある。みずほ証券の小林俊介チーフエコノミストは10%の円安は名目GDP(国内総生産)を1.6兆円押し下げると分析する。一方、同程度の円安で日本企業の海外現地法人の収益が3.5兆円拡大すると試算し、「円換算の利益を重視する海外投資家も多く、上場企業の業績や株価にはプラス」と指摘する。

上場企業全体では、円安による増益期待は大きい。大和証券の阿部健児チーフストラテジストによると、対ドルとユーロで1円の円安は24年度の主要上場企業の経常利益を0.5%押し上げる。一部の業種では円安で原材料コストなどが上昇するが「自動車や機械など、全体では増益効果の方が大きい」(阿部氏)。

トヨタに買い安心感が広がれば、長期の海外投資家の見直し買いが入る可能性もある。4月の株安局面では、海外投資家が先物を7000億円以上売り越した一方、長期投資家の多い現物株は1兆4000億円を買い越している。23年の年初からの累計でも、先物は買いのポジションが解消されたのに対し、現物株はなお7兆円超の買い越しだ。日本株への投資意欲はなお強い。

BofA証券の圷正嗣チーフ日本株ストラテジストは「長期投資家にとっては、決算直後よりも、アナリストが業績予想を見直す5月中下旬からの方が、精査した上で買いを入れやすい」と指摘する。8日は下げた日本株だったが、「円安・株高」への期待は崩れていない。

2024年5月8日水曜日

円安はどこまで進行するのか?日経参考資料

 日経の予測って余り当たらないのですが、掲載されているデータや図表が面白いので参考のために残します。
ところで、yahooのドル円掲示板を見ていると、殆どの個人投資家は、ハイレバレッジ25倍で、100万通貨で勝負するのが当たり前のようです。つまり、FX業者の通常の投資単位は、10,000通貨で、ドル円だと、10,000ドルが1単位でして、個人投資家は、最低100万ドルで投資しているわけです。150円/ドルとすると、1億5千万円で勝負をしています。
なお、保証金は、1/25として、最低、600万円となりますが、例えば、ドル円ロングだと、1円下がると、損失は、100万円となります。しかし彼等は、0.1円とか0.2円とかの波で勝負しているので、短時間で勝負ができるわけです。
普通のドル円の定期預金投資家の様に投資単位が1単位つまり10,000ドル=150万円とかになると、その100倍の値差と同じ損益になるわけです。つまり、僅かな変動つまり僅かな時間内で勝負するので、ドル円の値動きをかなり短時間分を予測すればよいことになります。
ある意味、安全と言えるでしょう。
でも、僕のような常識人には恐ろしい賭けです。
そんな前置きで、日経の記事を転載します。
ところで、ドル円の動きには、米国長期金利がかなりの相関性を持っています。
今日の米国長期金利は4.45%で、10日前の最高4.7%から下がり気味です。
つまり、米国経済の減速の予兆が見られるわけで、その点の記事についても転載します。
ただ、インフレについては収まる様子はなく、政策金利を下げられないのです。
この点は、ドル高継続の原因です。

円安進行、薄氷の抑止 為替介入・米景気にらみ綱引き

米消費者物価が焦点 日銀総裁、首相と面会

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円相場を巡る市場と政府の駆け引きが続いている。過度な円安に歯止めがかかった一方、7日の外国為替市場では、大型連休中につけた円の高値(1ドル=151円台後半)から3円ほど円安が進んだ。焦点は「為替介入」による円安けん制効果と米景気減速サインの行方だ。米消費者物価指数(CPI)など今後の指標次第では再び円売り圧力が強まりかねない。

「円安については日銀の政策運営上、十分注視をしていくということを確認した」。日銀の植田和男総裁は7日、首相官邸での岸田文雄首相との面会後に記者団にこう話した。市場関係者が注目したのは「植田発言」の変化だった。

4月29日に1ドル=160円台まで円安・ドル高が進んだのは、植田総裁の発言がきっかけとの見方は多かった。同26日の金融政策決定会合後の記者会見で、植田氏は足元の円安について「基調的な物価上昇率に今のところ大きな影響を与えているということではない」と言及していた。

市場では円安に対応した日銀の早期利上げはないとの受け止めが広がり、円売りが膨らんだ。円安進行は政府・日銀にとって誤算だったに違いない。岸田首相と植田氏の面会という場を利用して発言の「修正」を図り、暗に円売りをけん制したようにみえる。

過度な円安に歯止めがかかっても、政府と市場の駆け引きは続いている。植田発言をきっかけにした円安進行は2つの要因でいったん抑え込まれた。2度にわたる為替介入観測と、米雇用統計などに映る米景気減速のサインだ。

政府・日銀は認めていないが、4月29日、5月2日早朝の2日間で計8兆円規模の為替介入があったとみられている。2023年通年の貿易赤字が6.5兆円で、既に貿易赤字を上回る規模の円買い需要を介入により作り出した計算になる。

1回目の「介入」が効いたのか、投機筋の円売り拡大も一服したようにみえる。米商品先物取引委員会(CFTC)によると非商業部門(投機筋)の円売越額は4月30日時点で7週ぶりに前週を下回った。円売り規模は依然2兆円超と大きいものの、その後の円高を受けて一段と縮小している可能性もある。

介入効果に限界も

為替介入だけでは円安抑止に限界がある。介入は一度に大きな需給のゆがみを作り出すことで相場を変動させる一方、日米金利差の拡大など円安をもたらしてきたファンダメンタルズ(経済の基礎的条件)への影響は限られるからだ。

今回の為替介入効果を見極めるうえで、過去との比較は有益となる。22年10月の介入では、その時の安値である1ドル=151円94銭を超えて再び円安が進むのに1年超かかっている。為替介入によって円安進行を一定期間食い止めた形だ。

当時、介入効果に加えて米国サイドから「追い風」があったことは見逃せない。22年11月にインフレ率が市場予想を下回ることで生じた「逆CPIショック」が起きた。介入直後に米利上げ打ち止めと、将来の利下げ観測が浮上し、ドル全面高の流れが変わった。

24年の円安攻防でも、再び米国側からの追い風が吹き始めた。米金融政策の見通しを反映し円相場とも連動しやすい米2年債利回りは3日に急低下し、一時4.7%台前半を付けた。介入観測後に発表となった4月の米雇用統計で非農業部門の就業者数が17万5000人増と市場予想を下回ったことが大きい。

雇用の減速で米連邦準備理事会(FRB)が利下げに動く余地が広がったとの見方につながり、市場が織り込む年内利下げ回数は4月末の1回から2回に増えた。結果としてドル全面高の流れに一服感が強まった。日米金利差の拡大が止まり、縮小に向かうとの見立てから円売り圧力が弱まったともいえる。

今後の焦点は米雇用統計に映った米景気減速の兆候が本物かどうかだ。市場が注目するのは15日発表の4月のCPIだ。ソニーフィナンシャルグループの森本淳太郎シニアアナリストは「4月CPIも含めて継続的に米経済の減速を示す指標が続かない限り、明確なドル高基調の転換は訪れない」と指摘する。

3月のCPIは前年同月比3.5%上昇と2月の同3.2%上昇から伸びが拡大した。4月の数字でもインフレが根強いとの見方が広がれば改めて円売りが加速し、再び1ドル=160円を目指して円安が進むシナリオも残っている。

弱さ残る日本景気

日米の2年債利回りの差は足元で4.5%程度。金利差拡大が一服したとしても、歴史的にみればなお大きい。国内景気に弱さが残る日本では、日銀が積極的に追加利上げに動くとの見方は少数派だ。結局、金利差縮小→円高シナリオは「米国次第」(三菱UFJモルガン・スタンレー証券の植野大作チーフ為替ストラテジスト)との見立てにつながる。

需給面でも円高に振れにくい事情がある。7日の東京市場でもニューヨーク市場の1ドル=153円台後半から円安が進み、一時1ドル=154円台後半を付けた。輸入企業など国内実需勢の円売り・ドル買い需要の根強さを指摘する声は多い。

米経済に減速の兆し 雇用と物価、構図に変化も

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【ワシントン=高見浩輔】円の対ドル相場を左右する米経済に減速の兆しが出てきた。非農業部門の就業者数は4月に前月比で17.5万人増に落ち着いた。インフレ率がおおむね鈍化を続けるという米連邦準備理事会(FRB)の見立てに沿った動きが目立つものの、データにはなお強弱が混在する。

4月の米雇用統計は3月の31万人増から鈍化した。景気の軟着陸(ソフトランディング)に向かう程よい減速といえる。

金利先物市場は6日時点で、FRBが年末までに1〜2回の利下げをすると7割程度織り込んだ。10日ほど前の6割弱から上昇した。米連邦公開市場委員会(FOMC)参加者が3月の時点で見込んだのは3回だった。次回見通しを出す6月12日にどう変化するかが焦点となる。

利下げが遠のけば米債券市場の金利は高くとどまり、日米の金利差は大きく開いたまま円安・ドル高の要因となる。通常は雇用が強ければ利下げの必要は薄らぐが、FRBのパウエル議長は3月に「必ずしも利下げ見送りの理由にはならない」と言及している。

背景には移民が急増し、企業の求人を埋めていることがある。雇用が増えても、賃上げがインフレ率を押し上げるという構図には直結しないという説明だ。

移民は「弱い雇用」と呼ばれるパートタイムの割合が高いとされる。米議会予算局(CBO)は1月に121万人とみていた2024年の移民流入数の推計を330万人に引き上げている。

インフレ率はなお高い。1〜3月期の米個人消費支出(PCE)物価指数は前期比年率の伸びが3.4%と、23年10〜12月期の1.8%から加速して目標の2%を大きく上回った。

5月15日に公表する4月の米消費者物価指数(CPI)がカギを握る。24年1〜3月の物価上昇率は予想より上振れし、FRB高官らに利下げシナリオを遅らせる修正を迫った。雇用の勢いが落ち着いても、根強い個人消費がサービス価格を押し上げ続ける構図が変わらなければ、物価は強さを残す。

FRBが賃金動向をみる上で重視する雇用コスト指数は1〜3月期に前期比1.2%上昇と市場予想を上回る伸びを示した。米ウェルズ・ファーゴのエコノミストは「インフレ率の鈍化は今年も続く」とみて9月の利下げ開始を予想するが、先行きはこれから数カ月分のデータをみなければ判断できないと強調する。