厚生労働省は12日、新型コロナウイルスの感染を15分程度で診断できる「抗原検査」の検査キットを13日付で薬事承認すると発表した。陽性者を迅速に隔離できるようになる。ただ、当面は検査を受ける窓口は従来のPCR検査と同じ施設のため、効率的な検体採取体制の強化が不可欠だ。検査拡大に向けた本気度が問われている。
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富士レビオは「速やかにキットの供給を始める」として、すでに山口県の工場で週20万検査分のペースで生産を始めた。さらに、需要に応じ生産規模を拡大する方針だ。
同社のキットは鼻の奥を拭って採取した検体の中に「抗原」と呼ばれるウイルスに特有のたんぱく質があるか、その場で調べられる。症状のある感染者の場合は15分程度で結果が判明する。
PCRは結果が出るまで4~6時間かかるうえ、専門の研究所などに検体を送ることもあり、結果判明まで1週間程度かかる場合もある。
一方、抗原検査は迅速な診断で陽性者を素早く隔離できる。PCRの順番待ちだった人を素早く検査したりする効果を期待できる。
もっとも、結果判明までの大幅な時間短縮が、そのまま検査数の拡大につながるわけではない。
厚労省はPCRに比べウイルスの量が多くないと陽性と判定できないとし、抗原検査で陰性となってもPCR検査を求める。日本のPCR検査数は他の主要国を大幅に下回る状況が続いており、大量の検査待ちの人が出る恐れがある。
市販のキットを購入して自宅で検査したり、自分で民間の検査機関に送って検査してもらったりすることもできない。
検査を受けるのは当面、PCR検査を実施している各地の病院や医師会が設ける検査所などだ。検体を採取できるのは、感染防止の知識や防護具を備えた医師、歯科医師、臨床検査技師らに限られる。
地元医師会とともにPCRセンターを開設する墨田区保健所の西塚至所長は「抗原検査を実施する場合、現状では待機場所がないので結果が判明するまでほかの人の検査ができなくなる可能性がある」と話す。検査にかかわる医療従事者も増やす必要があるという。
経済再開に向けて検査体制の増強を求める声は強い。政府はPCR検査について1日2万件を目標に掲げるが、実際の件数は多い日でも1日約8千~9千件にとどまる。安倍晋三首相は緊急事態宣言の延長を発表した4日の記者会見で「目詰まりがある」と体制増強が思うように進んでいないことを認めている。
専門家会議も4日の提言で検査体制の拡充が喫緊の課題と認めた上で、PCR検査の体制強化と抗原検査キットの開発を政府に求めていた。
さらなる検査拡大のために期待される手法の一つが、唾液を使うPCR検査だ。鼻や喉の奥から検体を採取する必要がなく、医療従事者の感染リスクを抑えられる。日本では国立感染症研究所が開発を進め、厚労省は近く認める方針だ。加藤勝信厚労相は12日の閣議後会見で「PCR検査の状況がずいぶん変わると期待している」と話した。
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