その結果として、日本は、時期的な関係で、コロナウイルスが猛威をふるう時期を逃れたようだ。しかし、老齢者としては、これからの時期をどう過ごすかは、非常に慎重を要する選択となりそう。
だが、闘いはこれからだ。ウイルスは密かに伝染を繰り返し、秋には再び激しく現れると思われる。その時に備えて、闘いの準備をしておかねばならない。検査体制の充実、医療装備の充実、マスクや消毒薬の準備など、闘いに必要な装備は備蓄と国内生産体制を調えねばならない。
前哨戦の体制を見ると、日本の行動は第二次大戦の各国体制とほぼ同じなのが見て取れる。着実で装備の充実したドイツや米国、しかし、米国は初動に遅れるのが常で、直ちにこれを回復する。中国もまた、初動に遅れるが直ぐに重装備を取り返す。それらに比べて、日本はこざかしく動くのだが、装備は弱体で、神頼みと竹槍だ。次の戦いはどうなるのだろう。
未踏の「検査1日2000万件」 コロナ第2波防ぐ総力戦 日経5/08朝刊
コロナ、出口は見えるか(2)
経済再開の道を探る米欧も同様だ。安易に制限を緩めると8割とされる軽症の感染者が再びウイルスを広めかねない。米国は1日の検査を23万件から29万件に増やし、ドイツも上積みする。悩ましいのはそれでもリスクを払拭できないことだ。
その費用は2年で最大3千億ドル(約32兆円)だが「経済停止による月1千億~3500億ドルの損失より安い」として政府に大胆な覚悟を迫る。官民の総力戦であらゆる手段を講じる必要がある。
ただし、検査拡充だけでは出口は見えない。カギは医療体制の強化だ。
欧州でも致死率の低いドイツ。政府は「死者100万人」の最悪シナリオを3月に描き、医療体制の能力拡充に動いた。10万人あたりの集中治療室(ICU)病床は29床と、イタリアの2倍強だったが、ICU新設者に1床ごとに5万ユーロ(約580万円)を出すと決定。総数を4割増の4万床にした。
日本はどうか。1日の検査数は最大9千件台。10万人あたりICU病床数は4床と受け入れ体制は脆弱で、医療体制の崩壊は目の前の現実だ。
多数の患者を収容する救急病院で相次ぎ集団感染が発生。受け入れ拒否が広がり、4月下旬のたらい回し件数は主な消防本部で前年同期の倍に増えた。たらい回しの患者を受け入れてきた千葉県内の大病院の救急医療医師は語る。「うちもいつ院内感染が起きてもおかしくない」。交換すべきマスクは1日1枚。防護服も足りないという。
対応が遅いのは都道府県に権限を与えながら、国と自治体で責任を押しつけ合う状況が続いているためだ。検査の民間委託を渋り、民間病院に大胆な物資・資金支援もない。韓国が強力な司令塔を置き、大量検査と専門医療の両輪で危機を回避したのとは対照的だ。
中国・武漢では都市封鎖後も感染が拡大。2月に2万人が同時に入院し、重症者は1万人に達したとされる。「同じ事態が米国の都市で起これば対応できない」(推計した米研究チーム)。ましてや対応が後手に回る日本はひとたまりもない。
英キングス・カレッジ・ロンドンの渋谷健司教授は、今後も都市封鎖を避けつつ犠牲者を最少にするには「中・軽症の患者向け専門病院や臨時の治療施設も必要」と訴え、検査やICU拡充にとどまらない矢継ぎ早の対策を求める。最初の出口が見えても、コロナとの戦いは続くことに日本の自覚は乏しい。
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