コロナウイルスの件では、コロナウイルスの専門家会議で議事録を書いていない等との政府の大嘘は、この本質的欠陥の明確な表れだろう。
いま一度、戦争振り返る 戦後75周年、新たな視野開く
シニア・ライター 山田剛
『「雪風」に乗った少年』(西崎信夫著、小川万海子編)は、歴史のかなたに埋もれた「海軍特別年少兵」に志願し、16歳で駆逐艦「雪風」に乗り組んだ著者の回想録だ。小型の駆逐艦は海戦の最前線に立つため多くが沈没したが、雪風はマリアナ沖、レイテ沖海戦や戦艦大和の沖縄特攻など主要な作戦に参加しながら奇跡的に終戦まで生き残った。
撃沈された味方艦の生存者を必死に救助する様子や、自身をめがけて急降下してくる米軍機に機銃で反撃するシーンなどが克明に描かれる。著者は単なる軍国少年ではなく、軍隊の理不尽さを冷静に批判しつつ、「必ず生きて帰る」という信念で戦い抜いた。戦場の凄惨さも伝える実録戦記だ。
『特攻隊員の現実(リアル)』(一ノ瀬俊也著)は、美化されることが多い特攻隊員の本心や苦悩を描き出す。国民の熱狂と称賛を背負った隊員らも多くは絶望感とともに出撃。生き残った者が戦後の国民から白眼視され、特攻を命じた高級軍人らも責任逃れに終始してきたことに暗たんたる思いを抱く。
前線の兵士の苦難を赤裸々に伝えるのが『日本軍兵士』(吉田裕著)。装備や食料、メンタルを含めた健康状態、私的制裁など軍隊の過酷な状況を、末端兵士の視点から描き出した意欲作だ。
太平洋戦争の日本人戦没者310万人のうち9割が、サイパン島陥落で「絶望的抗戦期」に入った1944年以降に亡くなったという。230万人に及んだ軍人・軍属の死者のうち、餓死が140万人、艦艇が撃沈された海没死も35万人強に達するなど「戦闘」以外での死者が極端に多かった戦争の実像に迫る。
戦争後期には栄養不足で新兵の体力が低下し、結核や虫歯のまん延、さめ皮の軍靴など劣悪な装備品が士気の低下につながったという。閣僚の権限が及ばずに戦線の拡大を招いた統帥権の独立など、日本軍という組織の問題点にも触れている。
戦争そのものだけでなく、当時の内政や国際情勢を分析する著作も見逃せない。『決定版 日中戦争』(波多野澄雄ほか著)では、日米戦争よりも長く続いた日中戦争が当初の不拡大方針に反して泥沼化していった点に注目。何度か訪れた和平のチャンスをことごとく逃した外交のつまずきや、国際情勢の判断ミスを指摘する。
当初は親日的だった国際世論は、日本の拙劣な情報戦や蒋介石らのプロパガンダもあって反日一色となり、太平洋戦争へとつながる孤立の一因となった、と著者はみる。
南満州鉄道株式会社(満鉄)は、鉄道以外にも炭鉱や製鉄所、満州医科大をはじめとする学校、新聞やホテルなど多くの事業を手掛け、日本の大陸支配を支えた巨大国策会社として知られる。
『満鉄全史』(加藤聖文著)によれば、満鉄の経営は満州事変の勃発や満州に君臨した関東軍の暴走、組織の肥大化、さらには政党や官僚の思惑に翻弄され続ける。十河信二ら満鉄出身者がのちに国鉄で新幹線計画に携わったことや、満鉄東京支社ビルは戦後米国に売却され、大使館別館として利用されたエピソードも興味深い。
『なぜ必敗の戦争を始めたのか 陸軍エリート将校反省会議』(半藤一利編)は、旧陸軍の将校が1970年代に開いた座談会を再録し、編者が詳細な解説を加えている。海軍内では「米国が石油禁輸に踏み切れば即開戦」との意思統一があった、と指摘。戦争は陸軍の暴走だけで始まったわけではないことがわかる。
『戦前日本のポピュリズム』(筒井清忠著)は、メディアの好戦的な報道や世論の圧力が日中戦争の収拾を阻害し、軍部が対米戦争にまで突き進んだ背景との見解を示している。
日本の運命を変えた先の戦争は、今なお新たな資料や証言が世に出る「生きた歴史」ともいえる。それだけに様々な見方や意見があるが、多くの書籍を読み比べていくことで、新たな視野が開けてくるかもしれない。
【さらにオススメの3冊】
(1)『大政翼賛会への道』(伊藤隆著)財閥などの打倒を目指した新体制運動はいかに変質していったのか
(2)『太平洋戦争(上下)』(児島襄著)…東南アジアから南洋までかつての戦地をくまなく歩いた大著
(3)『米軍が恐れた「卑怯な日本軍」』(一ノ瀬俊也著)…仕掛け爆弾などを多様した戦術とルーツを解説
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